
前回のブログでご紹介した「サステナブル・シーフード・ウィーク2019」オープニングイベントの会場は、東京都江戸川区にある葛西臨海水族園でした。
イベントの最初に、司会(天津の向清太朗さん)が客席に、これまでの来園回数を聞きました。1回、5回以上、10回、20回、とハードルを上げていっても手が挙がり続け、なんと50回以上!という人もいました。何度も通いたくなる魅力的な水族館なのです。
そんなわけで今回は、葛西臨海水族園と、それが立地する葛西臨海エリアを、MSC漁業認証規格の3原則にも関わる「生態系保全」に着目しつつ、ご紹介します!
祝30周年! 葛西臨海水族園
葛西臨海水族園の最寄りはJR京葉線の葛西臨海公園駅。東京ディズニーランド(TDL)がある舞浜駅の隣駅です。

来年の東京オリンピックに向けて葛西臨海公園駅のすぐ近くにカヌー・スラロームの競技場ができ、駅前も改修されキレイになっています。
実は今年(2019年)は、葛西臨海水族園にとって特別な年。1989年10月10日にオープンしてから、ちょうど30年目なのです!
※詳細は、水族園の特設サイト「葛西臨海水族園30周年スペシャルサイト」で。

インスタ映えする葛西臨海水族園の入り口。向かって左側には、TDLのシンデレラ城がうっすら見えました。
東京都の公営施設だから、一般入場料は700円。小学生以下に至っては無料です。早速、中に入りましょう!
最初の水槽では、オープニングイベントで園長さんが動きを再現していたシュモクザメが出迎えてくれました。ハンマーヘッドシャークと呼ばれる通り、頭の形が独特です。

そして、円形の大型水槽には、この水族園を全国的に有名にしたマグロの群泳。圧巻です。

室内展示だけではありません。外には波打ち際を再現した「渚の生物」やペンギンの展示、ウニやカニ、サメやエイなどに実際に触れるコーナーがあります。

レストラン「シーウィンド」の入り口には、30周年を記念した大きな年表がありました。入場を打ち切るほど盛況だったという開園日の写真もあって、興味深いです。
いろいろな機関と連携していく葛西臨海水族園の素敵な社交性も分かります。
国内外の水族館との友好提携は、サステナブル・シーフードを選ぶための格付けプログラム「シーフード・ウォッチ」を開発したことで有名なモントレー湾水族館と1990年に、3.11の被災からいち早く復興して話題となった「ふくしま海洋科学館(アクアマリンふくしま)」とは2000年に結んでいます。
また、2018年には、日本近海の魚の資源状態などを研究している国立研究開発法人「水産研究・教育機構」とも包括連携協定を締結しています。

レストランに入ると、カレーやスナックなど、いくつか30周年記念メニューが登場していました。写真の「まぐろの竜田揚げ」も、その一つです。
マグロの一部は絶滅危惧種なので、種類を問い合わせたところ、キハダマグロでした。キハダ(yellowfin)は、ビンナガ(albacore)やカツオ(skipjack)と並んで、MSC漁業認証の取得例もあるマグロなので、安心して、美味しくいただけました。
海洋プラスチック問題を意識してか、紙のフォークがあったので選んだら、森林認証のFSCマークがありました。FSCは、MSCと同じくWWFらが立ち上げた国際認証です。

特設展示「海のゆりかご」
見どころいっぱいの葛西臨海水族園ですが、特に注目したいのが、2018年11月から始まった特設展示「海のゆりかご」です。

藻場やサンゴ礁など、海の生き物の産卵場や、仔魚などの隠れ家や餌場として、なくてはならない「ゆりかご」のような環境を特集しているコーナーです。
今年6月20日からスタートした第2期展示は2月末まで。広い海洋の中でも特に生物多様性が豊かで、いろいろな生き物の「ゆりかご」として非常に重要な「サンゴ礁」がテーマです。

子どもにも見やすい高さにセットされた「ゆりかご水槽」では、サンゴや熱帯魚たちを、アクリル越しではなく、直接じっくり観察することができます。

側面には、もっと小さいお子さん用の、のぞき窓も。ディズニー映画に出てきたニモのお友達(ナンヨウハギ)の姿に、「ねぇママ、ドリーだよ! ドリーがいるよ!!」と、可愛らしい坊やが叫んでいました。

目を引く青いグルグル模様の熱帯魚もいます。これは何でしょう?

少し歩くと、こんな ↓ 解説がありました。成魚になったら似ても似つかない模様になることが、ゲームで遊びながら分かる仕掛けです。


ハンズオン(体験型の展示)のコーナーなので、お子さんたちも楽しそうに行ったり来たりしていました。特に人気だったのが、こちら ↓ 。
一見、愉快ですが、実は……。小さなボールを生まれたばかりの魚の子に見立てて、偶然によって、ある子は海流に流され、ある子は捕食者に食べられたりして、多くは「ゆりかご(サンゴ礁)」にたどり着けない過酷な現実を再現する結構シュールなゲームなのです。

これ ↓ は、サンゴのポリプ(個虫)の一つになりきって、サンゴが動物であることを実感できるパネル。太陽が描かれている通り、共生する褐虫藻のおかげで光合成でも栄養を得られるサンゴの特殊な生きざまは、大人にも興味深いです。

私が個人的にツボだったのは、こちら ↓。サンゴ礁の海に潜るとボリッ、ゴリッと音がすることがあるのですが、この展示は、それを再現しています。
音の犯人は、サンゴを食べるナンヨウブダイ。モニターに近付くと、ちゃんと食べている音が聞こえ、鋭い歯の実物展示までありました。


とはいえ、ナンヨウブダイにかじられる「食害」より、ずっと、サンゴにとって痛手なのは、最近の極端な水温変化です。「サンゴの危機」として展示されていたのは、高水温で白化したサンゴの写真でした。
「海のゆりかご」コーナーには、たくさんの海の生き物たちを底辺で支えているプランクトン(クラゲを含む浮遊生物)の展示もありました。クラゲ好きの方はお見逃しなく!

終盤の、この「ちょっと大人向け」のパネルには、中高生ぐらいから興味を持ちそうな、ややディープな話題が集まっていました。
例えば、ラムサール条約のこと。「葛西海浜公園」は、2018年10月に、湿地を保全する国際的な枠組みであるラムサール条約に登録されました。葛西「海浜」公園は、葛西「臨海」公園の沿岸にある人工干潟を含む、沖合2kmに広がる約412ヘクタールの海域です。
これは余談ですが、オリンピックのカヌー・スラロームの競技場は、当初は葛西臨海公園の一部を壊して作る予定でした。しかし、東京に残された貴重な野鳥のオアシスである葛西海浜公園に影響が及ぶため、鳥好きをはじめ多くの人が署名活動を展開。その結果、競技場の建設地は陸側の駐車場のほうに変更されました。その後、このラムサール条約登録の朗報が届きました。葛西の海辺は、多くの都民や観光客に愛され、守られてきた場所なのです。
ラムサール条約の意義や、ここの浜にすんでいる生き物たちの詳細は、このパネルにぶら下がっている冊子で読めます。この冊子、水族園2階でもらって持ち帰ることもできます。

あと、生態系保全に関係する展示としては、「海のゆりかご」の隣にある「東京の海」もオススメです。ある水槽には、なじみの名前の、江戸前(東京湾)の魚たちが泳いでいます。

人口密集地から複数の川が流れ込む東京湾ならではの展示として、ある水槽には、約30本ものペットボトルが!

その量は「1分間に日本から海に流れ出している海洋プラスチックごみを500mlペットボトルに換算した量」だと言うからビックリ。これもまた海の生き物を脅かす深刻な問題です。
思いを持って造成された地
この水族園の魅力は、少し歩けば実際の海の生き物とも触れ合えること。ラムサール条約に登録された葛西海浜公園の人工干潟の一つ「西なぎさ」は、葛西渚橋を渡ってすぐです。

陸から見て左側にある「東なぎさ」は、野鳥保護のため立ち入り禁止です。右側にある「西なぎさ」は自由に入れて、生き物とたわむれることができます。下の写真の看板にある通り、いろいろな魚やカニや貝などが生息しています。それをついばむ野鳥の姿も頻繁に見られます。

昭和40年頃、すでに東京湾はほとんど開発され尽くし、葛西は残された貴重な自然海岸であるにも関わらず、ゴミ捨て場と化して漁業も消えていました。
葛西の海の汚染を嘆き、そこに広がる「三枚州」と呼ばれる干潟を少しでも残そうした人々の思いが、「葛西沖開発土地区画整理事業」に反映されて、現在のような美しい公園となりました。
その経緯は、先ほどの冊子や、展望台「クリスタルビュー」の2階に展示されています。

ガラス張りの展望台「クリスタルビュー」
葛西臨海公園内の案内板に「この辺りはかつては葛西浦と呼ばれる葦の生い茂る遠浅の海で、海辺の村では、江戸時代初期から漁業を暮らしの一助として営んでいたと思われます。特に海苔の採取は盛んで、葛西海苔として知られていました。また、明治の中頃からはアサリ、ハマグリ、カキなどの養殖も行われていました」とあり、少し切なくなりました。
クリスタルビューの一角では、東京都建設局区画整理部が1995年に制作した短い記録映像が流れ、在りし日の漁業の一端を、動画で見ることができます。


なお、先日の台風19号では、首都圏も大雨に見舞われ、江戸川区の水害ハザードマップが、お手本のように報道されていました。江戸川区は過去の取水の影響で地盤沈下しており、浸水被害への危機意識が高い地域です。葛西臨海公園も計画段階から防災を考えて、目には見えない「葛西海岸堤防」を地中に埋め込み、そのラインから陸側は、高潮に備えた十分な高さまでかさ上げして造成されているそうです。標識によると、クリスタルビューから160mほど駅側に堤防が埋まっている様子。これからの時代、こういう防災知識を頭に入れておくことも、海辺のレジャーを楽しむためには必要なのかもしれません。

クリスタルビューから葛西臨海公園駅(高架線)方向を望む
以上、葛西臨海エリアの取材レポートでした。次回は再び、サステナブル・シーフードの話題をお届けします。















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