【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】



※GSSI承認スキームのロゴ一覧はこちら
※現状はいったん承認されると継続・不継続を検証するシステムは不在ですが、会場からの質問にハーマンさんは「まさに今、継続的な改善につなげるための新たなモニタリング・プログラムを詰めています」と答えました

つづく後編で、石井さんのプレゼン内容などをレポートします!
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2015年から続く「東京サステナブルシーフード・シンポジウム」が、今年も盛大に開催されました。
今年のテーマは「2020年に向けて主流化:調達、社食、売り場が変わる」。各論には、ウナギ産業、社員食堂、おもてなし、ESG投資、違法漁業撲滅など、さらに昨年より一歩踏み込んだ印象のタイトルが並び、来場者は600人以上と過去最多でした。
朝から豪華ゲストの講演ラッシュ!
まず登壇したのは、MSCを支えるスポンサーの一つでもあるウォルトンファミリー財団(世界最大のスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」を経営する一族の財団)エグゼクティブ・ディレクターのカイル・ピーターソンさん。

20年以上の活動の末、今や北米の食品業界の80%がサステナビリティの公約をしていることや、世界で支援するFIP(漁業改善プログラム)の成果などを発表し、多様なステークホルダーが力を合わせることの大切さを強調しました。
日本政府からは、外務省、環境省、水産庁の講演がありました。
外務省の地球規模課題審議官大使の鈴木秀生氏は、乱獲の放置が、増加見込みの将来人口の食糧や生業を奪うことにつながると述べました。
外務省の地球規模課題審議官大使の鈴木秀生氏は、乱獲の放置が、増加見込みの将来人口の食糧や生業を奪うことにつながると述べました。
環境省の森本英香事務次官は、海洋プラ問題についてサーキュラーエコノミー(循環経済)の重要性やプラごみ処理施設のない国への援助実績を語り、持続可能な漁業については、生物多様性に関する科学に基づく政府間組織「IPBES」の取り組みなどを紹介しました。
MSCの原則2にもある通り、健全な海洋生態系は持続可能な漁業の基盤。でも、IPBESがサンゴ白化などを踏まえて下した評価は「非常に悲観的」と森本事務次官。サステナブルシーフードを論じる同シンポが年々熱気を帯びる背景には、この根本的かつ深刻な現実があるわけです。
水産庁の長谷成人長官は、水産業を持続的な産業にするために、漁船サイズや隻数の減少といった従来型の管理から、資源状態を踏まえた漁獲量の管理に重心を移していくと述べました。

長谷長官が強調したのは、自然環境の変化と人口減少の影響、そして、日本周辺における外国船の操業の活発化です。外国船をしっかり取り締まった上で、皆で少しずつ我慢して(漁獲量を控えて)資源量の底上げを図りたい、というお話でした。
漁船の魅力向上、浜の活気を保つための新規参入促進、IUU対策や密漁防止など、制度面から日本の水産を改革し、「漁村コミュニティが存続していく道を切り開いていきたい」と長谷長官。この「水産改革」は、今年のシンポジウムのキーワードの一つだったと思います。
以上は全体向けの講演で、午後からは4部屋に分かれて11テーマの議論が展開され、夕方の総括へと進みました。興味深い議題が目白押しで回り切れないのが残念でした。各分科会の報告は、シンポジウム公式サイトに順次、掲載されるようです。
GSSIお墨付きスキームが4つも集合
MSC日本事務所プログラム・ディレクター石井幸造さんは、分科会「認証エコラベル商品の調達を増やす」に登場しました。ファシリテーターは、同シンポを日経ESGと主催したシーフードレガシーのCEO、花岡和佳男さんです。
壇上には、すでに日本で流通している、もしくは間もなく流通が始まる、4つの認証制度のオーナーが並びました。
日本からはMSCの石井さんと、ASCジャパンのジェネラルマネージャーの山本光治さん。
日本からはMSCの石井さんと、ASCジャパンのジェネラルマネージャーの山本光治さん。
そして、米国で最も知られているグローバル養殖エコラベル「BAP認証」については、グローバル・アクアカルチャー・アライアンス(GAA)アジア・ビジネス・デベロップメント・ディレクターのジェーン・ビさん。
さらに、アラスカに特化した「RFM認証」については、アラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)サステナビリティ・サーティフィケーション・アドバイザーのスーザン・マークスさん。
略称ばかりで少々戸惑いますが、BAPは「バップ」、ASMIは「アズミ」と読みます。
略称ばかりで少々戸惑いますが、BAPは「バップ」、ASMIは「アズミ」と読みます。
この4つの制度に共通するのは、「世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)」の承認を受けていること。
というわけで、GSSIプログラムディレクターのハーマン・ヴィッセさんも、昨年に続いて登壇されました。
というわけで、GSSIプログラムディレクターのハーマン・ヴィッセさんも、昨年に続いて登壇されました。

左から進行役の花岡さん、GSSIのハーマンさん。そして、MSCの石井さん、ASCの山本さん、GAAのジェーンさん、ASMIのスーザンさん
「5年前は、認証制度の信頼性をめぐり混乱が生じていました。監査などの作業にも重複がありました。そこで、より透明性や信頼性を高めるために、業界や企業、市場、政府、国際組織、市民社会などマルチステークホルダーで組織したのがGSSIです」(ハーマンさん)
世界に150種ほどある水産エコラベルの信頼性の担保と改善のために設立されたGSSIは、ラベル側からの申請を受けて、そのスキーム(認証制度)がFAOのガイドラインが示す基準を満たしているかを審査しています。参考:GSSIグローバル・ベンチマーク・ツール
今では70以上の企業と10以上の国際機関やNGOとパートナーシップを組み、これまでに7つのスキームを承認しました。
まずGSSIに承認されたのは、米国のアラスカに特化した2010年設立のRFM認証です。「かねてより第三者に承認してもらえる仕組みを求めていた」ため、GSSI誕生前の2015年からGSSIのプロセスに協力していたそうです。2016年7月に一番に承認されました。
2番目がアイスランドのIRFM認証(2016年11月)で、以上はローカルなスキーム。
翌2017年の3月に、グローバルなスキームとして初めて承認されたのが、MSC認証でした。
2017年の10月にはBAP認証も加わりました。
翌2017年の3月に、グローバルなスキームとして初めて承認されたのが、MSC認証でした。
2017年の10月にはBAP認証も加わりました。
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※現状はいったん承認されると継続・不継続を検証するシステムは不在ですが、会場からの質問にハーマンさんは「まさに今、継続的な改善につなげるための新たなモニタリング・プログラムを詰めています」と答えました
MSCの石井さんは、「複数の認証制度があるなかで、MSC認証が信頼性の高い制度であることを証明するためにGSSIの承認を申請しました。GSSIの指標を満たすため、審査機関が審査費用に関するより明確な情報を申請者に提供するようにしたり、審査員の適正に関する要求事項を改訂するなどの対応を行いました。GSSI側や関係者から非常に多くのコメントがあり、その対応が大変で、申請から18カ月間のタフなプロセスでした。でもその結果、グローバルで展開しているスキームとしては世界で初めて承認され、しかも補足項目については63項目を満たしました。これはGSSIに承認された認証制度の中で(現在)最多です」と述べました。

MSCはFAOのガイドラインに加えて、ISEAL(アイシール)の自主規範も満たしています。その点も評価されてGSSIに承認されました。
GSSIに承認されて間もないASCの山本さんは、「市場の要請に応えてGSSIに申請しました。本質的な項目に加えて付属的な(補足の)項目でも得点を稼げる仕組みなので、養殖認証の中で最高得点を取れました。数値で出していただけたのはありがたいです」と述べました。
一方で、それぞれ違う分野に力を入れている認証制度をGSSI基準をクリアしただけで一緒くたにすることに山本さんは違和感を表明。消費者としては、それぞれのスキームの個性を知ることがポイントになりそうです。
ラベル使用料が無料!?
例えば、グローバル養殖認証BAPの個性は、顧客の要求を受けてアニマルウェルフェア(動物福祉)にも配慮する包括的なスキームとなっており、特に食の安全に焦点を当てています。3匹の魚が円を描くロゴが目印で、ラベル料金は無料です。
アラスカのRFM認証はローカル漁業認証です。アラスカ州は憲法にまで水産資源のサステナビリティが書き込まれている米国唯一の州。そしてスーザンさんは、認証はいろいろなマーケットで要求されるから取得したのであって、認証ラベルありきではないと強調しました。
「すべては強力かつ透明な漁業管理から始まります。これがないとサステナビリティはあり得ません。そして、消費者にとって、選択肢があることは非常に重要だと考えています」(スーザンさん)
質疑応答の時間に「ASCもBAPもグローバルな養殖認証。いろいろな選択肢があるのはいいが、マークがたくさんありすぎて分からなくなる。相互認証は?」という質問が出た時は、
ASCの山本さんが、「相互認証の話はないけれど、同じ魚種の認証基準の違いなどを生産者に分かりやすくマトリクス式で伝えるツールを作ろうという覚書は交わしました」と回答。
ASCの山本さんが、「相互認証の話はないけれど、同じ魚種の認証基準の違いなどを生産者に分かりやすくマトリクス式で伝えるツールを作ろうという覚書は交わしました」と回答。
BAPのジェーンさんは、「共通点も差異もあります。だからこそ、いろいろな認証ラベルを検証してくれるGSSIのようなプログラムがあるわけです」と答えました。
そしてジェーンさんもまた、「選択肢がたくさんあるほうがいい」と、スーザンさんと同じ見解を述べました。まだMSC「海のエコラベル」でさえ店頭でたくさんは見られない日本の感覚では、「水産認証エコラベルの選択肢……」という状況自体が想像しにくいので、彼我のギャップを感じました。
そしてジェーンさんもまた、「選択肢がたくさんあるほうがいい」と、スーザンさんと同じ見解を述べました。まだMSC「海のエコラベル」でさえ店頭でたくさんは見られない日本の感覚では、「水産認証エコラベルの選択肢……」という状況自体が想像しにくいので、彼我のギャップを感じました。
なお、アラスカのRFMもBAPと同じくラベル使用料は無料とのこと。非営利組織のMSCはラベル使用料が活動の主な原資と聞いていますので不思議に思ってMSC日本事務所に問い合わせたところ、地域や業界が主となり立ち上げたスキームは、そうではないMSCやASCと運営の仕組みが異なるからではないかとのこと。どのスキームも活動資金を必要としていますが、その成り立ちによって、取り組みを支えている主体は違うわけです。それも含めてスキームの個性と言えそうです。
つづく後編で、石井さんのプレゼン内容などをレポートします!
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瀬戸内 千代 (せとうち・ちよ)
海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。1997年筑波大学生物学類卒業後、理科実験器具メーカー、出版社等を経て2007年に独立。東京都市大学環境学部編著『BLUE
EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。』(2015年、東急エージェンシー)、笹川平和財団海洋政策研究所編『海洋白書2018』の編集に協力。任意団体「海の生き物を守る会」、特定非営利活動法人OWSなど海のNPOの機関誌編集も継続中。趣味は旅と磯遊び。