【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】
日経BP社主催の「東京サステナブルシーフードシンポジウム」が10月27日に開催されました。シーフードレガシー代表の花岡和佳男さんの元気な声で始まるこの催しも、今年で3回目。おいしい魚を未来につなごうと各方面のエキスパートが国内外から集まり、朝から晩まで密度の濃い対話を繰り広げました。そのほんの一部をレポートします。

基調講演に招かれたのは、信号3色で水産物の資源状態を示すアプリ「Seafood Watch」で知られる米国「モントレーベイ水族館」副館長のマーガレット・スプリングさん。

講演が終わると、さかなクンが登場!

さかなクン「定置網はサステナブルな漁法」、マーガレットさん「科学的な裏付けが必要」というやりとりが印象的な対談でした。これはMSC認証にも関わる問題なので、近日中にブログ(MSCのCEOハウズさんへのインタビュー)で掘り下げます。
One-by-One(1つの釣り針、1つの釣り糸、1匹ずつの漁獲)は、資源保全や生息域へのダメージ削減に役立つだけでなく、雇用拡大や文化保存への寄与など、多面的な価値を持つというお話。
ヤマサ脇口水産代表取締役の脇口光太郎さんは、一本釣りの魚は、1本ずつ手で引き上げて活け締め(いけじめ)できるから新鮮でおいしいと語りました。
同社は、マグロの一本釣り漁で2012年にMSCの予備審査を完了。現在、本審査入りに向けて、後述の西友などとFIP(漁業改善プログラム)に取り組んでいます。

ジェレミーさんは右端。左からシーフードスマート代表理事の生田與克さん、ヤマサ脇口水産の脇口さん、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング取締役の長谷川琢也さん
ジェレミーさんは、2012年にインド洋で初のMSC認証を取得したモルディブの一本釣りカツオ漁のエピソードを紹介しました。当初、この認証は条件付きで、MSCから示された課題をクリアできなければ、やがて認証が取り消される状況でした。
そこで、認証継続を望んだ彼らは一念発起。各方面に働きかけ、ついに政策までもサステナブルな方向に変えてしまいました。MSCでも語り継がれている小規模漁業者の素敵な成功事例です。
今回はGSSIプログラムディレクターのハーマン・ヴィッセさんが来日。水産エコラベル急増による市場の混乱やラベル使用現場のコスト増を背景に世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative)が誕生した経緯を語りました。
もともと信頼獲得のために複数の国際的なガイドラインに則して作られたMSC認証は、水産エコラベルの透明性・平等性・変革を支えるGSSIに、グローバルかつ持続可能な水産物の認証プログラムとして世界で最初に認定されています。
GSSIは、独立性など認証制度に重要な諸条件を継続的にチェックしている世界で唯一(今のところ)の仕組み。認定要件として、180カ国が署名した「FAO(国連食糧農業機関)ガイドライン」の遵守を求めており、これまでに
の4つの水産エコラベルにお墨付きを与えています。ASCの認定はこれからだそうです。

右から2番目がハーマンさん。「認証は最終目標ではない。あくまでも将来の食を支える責任ある持続可能な漁業・養殖業の実現がゴール」と繰り返しました
東京五輪の調達コードに「GSSIによる承認」が盛り込まれた影響もあり、今年に入って初来日してから早くも3回目の来訪となるハーマンさん。「日本の関係者が課題の重要性を認識して、2020年に向かって協働すれば、きっと素晴らしい目標を達成できるでしょう。私たちもコラボレーションを望んでいます」と、満場の参加者にエールを送りました。

右端が和間さん
親会社のようにサステナブルシーフード100%を今すぐ目指すのは難しいとしても、「重要性を重々理解して」「MSCやASC(認証品販売)を目標にしている」という西友は、日本漁業の認証取得を後押しすべく、MSC認証を目指す漁業改善プログラム(FIP)や、ASC認証を目指す養殖漁業改善プログラム(AIP)に取り組む漁業者たちの支援を進めています。
2017年度は、女川(宮城県)の銀鮭AIPと那智勝浦(和歌山県)のビンチョウマグロ延縄FIPを、助成金や販売サポートによって応援。後者は、MSCの認証取得を目指す前述のヤマサ脇口水産さんたちの取り組みです。
和間さんは、「売り場で直接お客様と対話できる従業員が、いかに重要性を理解して自信を持ってお勧めできるか」という点も、サステナブルシーフードを広げる上で大切と述べました。
【イオン】イオンは、グループ1179店舗でCoC認証(MSC・ASC共通)を取得済み。サステナブルシーフードの裏付けのトップにMSC・ASC認証を据えており(2番目はGSSIと完全養殖、3番目はFIP)、水産エコラベルによる「安心の可視化」を推し進めています。

イオン執行役の三宅香さんは、消費者のMSCに対する疑問に答えるための一問一答式のスライドも披露。各問に明確な回答を述べました。さすがはMSC導入の先駆者です。

イオンリテールグループ商品戦略部の山本泰幸さんによると、イオンは「分かりやすく、コストの重複なく、世界に通用するエコラベルを採用することで、シングルスタンダードを目指す」と決めて、熟慮の上で、MSC・ASC認証を選択しています。
でも今回、山本さんは一抹の不安も吐露しました。「中国アリババグループの天猫生鮮など世界の巨大小売りがMSC調達に乗り出しています。イオンの売り場の6割近くは練り製品も含め輸入魚ですから、(MSC認証魚を)調達できなくなるという危機感がある。スピードをもって進めなければなりません」
さらにMSCに対して、「定置網漁など日本漁業をもっと理解して」「ASCのように人権や労働の視点も入れて」といったリクエストも。
先日、アジアの小売りとして初めてGSSIのパートナー企業になったイオン。「積極的に参加することによって持続可能な調達を早期実現して、次の世代に魚を残していきたい。非常に期待しています」という山本さんの言葉が心に残りました。
【生協】2866万人の組合員を抱える日本生活協同組合連合会を代表して登壇したのは、松本哲(さとし)さん。魚売り場の半分をMSC認証品が占めるスイスを視察して、魚種が豊富で冷凍より生鮮流通の多い日本で広めるには各ステークホルダーの協働が必要と感じたそうです。
その課題も認識した上で、松本さんは「MSC・ASCが最も信頼があり、商品や利用者の広がりが一番のラベルなので、その商品をきちんと我々も扱っていく」「認知率を上げるためにも、なるべくなら利用の多い(売れ筋の)商品を認証品にしたい」と語りました。
2007年からMSC認証品を扱っていた日生協は今、改めて「海のエコラベル」付き商品に力を入れています。認証品の商品数は50に迫る勢いで、さらに2018年度はMSC認証のホタテやホキも扱い始める予定だとか。
今年は、認証品の総額が一気に前年の約4倍に伸びています!

棒グラフは卸売価格の出荷額。2009~12年度が15億円で、その後は認証品の廃盤などで減少傾向だったものの、2016年にMSC認証を取得したタイセイヨウサバをノルウェーから調達したことも影響して、今年は急増し40億円規模に
認証品増加の主要因は、ノルウェーのサバ。日生協は産地のエピソードや商品が届くまでのストーリーを重視しており、組合員の多くは国産品志向です。このギャップを埋めるため、西友と同じく、MSC認証の予備審査などに挑戦する日本の漁業者の支援も検討しているそうです。

会場ロビーの生協ブース。MSC認証品が多数載っている宅配カタログには「海のエコラベル」付き商品を選ぶ意義の解説も
同業他社で普段はライバル関係にあろうと、会場に集まった人は皆、もっと大きな視点で「きちんとした魚を調達できる日本」を切望している。いろいろな企業の発表を聞いて、それを強く感じました。
ボリュームたっぷりのシンポジウムだったので、ブログも2部に……。この続きは次回お届けします!
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日経BP社主催の「東京サステナブルシーフードシンポジウム」が10月27日に開催されました。シーフードレガシー代表の花岡和佳男さんの元気な声で始まるこの催しも、今年で3回目。おいしい魚を未来につなごうと各方面のエキスパートが国内外から集まり、朝から晩まで密度の濃い対話を繰り広げました。そのほんの一部をレポートします。

基調講演に招かれたのは、信号3色で水産物の資源状態を示すアプリ「Seafood Watch」で知られる米国「モントレーベイ水族館」副館長のマーガレット・スプリングさん。

講演が終わると、さかなクンが登場!

さかなクン「定置網はサステナブルな漁法」、マーガレットさん「科学的な裏付けが必要」というやりとりが印象的な対談でした。これはMSC認証にも関わる問題なので、近日中にブログ(MSCのCEOハウズさんへのインタビュー)で掘り下げます。
モルディブの一本釣り漁師さんたちの快挙
世界で48の企業・団体が参画している国際一本釣り基金(IPNLF)からは、東南アジア支部長のジェレミー・クローフォードさんが来日しました。One-by-One(1つの釣り針、1つの釣り糸、1匹ずつの漁獲)は、資源保全や生息域へのダメージ削減に役立つだけでなく、雇用拡大や文化保存への寄与など、多面的な価値を持つというお話。
ヤマサ脇口水産代表取締役の脇口光太郎さんは、一本釣りの魚は、1本ずつ手で引き上げて活け締め(いけじめ)できるから新鮮でおいしいと語りました。
同社は、マグロの一本釣り漁で2012年にMSCの予備審査を完了。現在、本審査入りに向けて、後述の西友などとFIP(漁業改善プログラム)に取り組んでいます。

ジェレミーさんは右端。左からシーフードスマート代表理事の生田與克さん、ヤマサ脇口水産の脇口さん、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング取締役の長谷川琢也さん
ジェレミーさんは、2012年にインド洋で初のMSC認証を取得したモルディブの一本釣りカツオ漁のエピソードを紹介しました。当初、この認証は条件付きで、MSCから示された課題をクリアできなければ、やがて認証が取り消される状況でした。
そこで、認証継続を望んだ彼らは一念発起。各方面に働きかけ、ついに政策までもサステナブルな方向に変えてしまいました。MSCでも語り継がれている小規模漁業者の素敵な成功事例です。
認証制度を審査するGSSI
水産業を持続可能にする有効なツールである水産エコラベル、特にMSCの話題は、同シンポジウム中に英語でも日本語でも繰り返し登場しました。今回はGSSIプログラムディレクターのハーマン・ヴィッセさんが来日。水産エコラベル急増による市場の混乱やラベル使用現場のコスト増を背景に世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative)が誕生した経緯を語りました。
もともと信頼獲得のために複数の国際的なガイドラインに則して作られたMSC認証は、水産エコラベルの透明性・平等性・変革を支えるGSSIに、グローバルかつ持続可能な水産物の認証プログラムとして世界で最初に認定されています。
GSSIは、独立性など認証制度に重要な諸条件を継続的にチェックしている世界で唯一(今のところ)の仕組み。認定要件として、180カ国が署名した「FAO(国連食糧農業機関)ガイドライン」の遵守を求めており、これまでに
の4つの水産エコラベルにお墨付きを与えています。ASCの認定はこれからだそうです。

右から2番目がハーマンさん。「認証は最終目標ではない。あくまでも将来の食を支える責任ある持続可能な漁業・養殖業の実現がゴール」と繰り返しました
東京五輪の調達コードに「GSSIによる承認」が盛り込まれた影響もあり、今年に入って初来日してから早くも3回目の来訪となるハーマンさん。「日本の関係者が課題の重要性を認識して、2020年に向かって協働すれば、きっと素晴らしい目標を達成できるでしょう。私たちもコラボレーションを望んでいます」と、満場の参加者にエールを送りました。
スーパーマーケットの取り組み
【西友】世界最大手の小売りである米国ウォルマートは、GSSIの判断を自社の調達基準に生かしています。傘下の西友からは今回、企業コミュニケーション部VPの和間久美恵さんが来場しました。
右端が和間さん
親会社のようにサステナブルシーフード100%を今すぐ目指すのは難しいとしても、「重要性を重々理解して」「MSCやASC(認証品販売)を目標にしている」という西友は、日本漁業の認証取得を後押しすべく、MSC認証を目指す漁業改善プログラム(FIP)や、ASC認証を目指す養殖漁業改善プログラム(AIP)に取り組む漁業者たちの支援を進めています。
2017年度は、女川(宮城県)の銀鮭AIPと那智勝浦(和歌山県)のビンチョウマグロ延縄FIPを、助成金や販売サポートによって応援。後者は、MSCの認証取得を目指す前述のヤマサ脇口水産さんたちの取り組みです。
和間さんは、「売り場で直接お客様と対話できる従業員が、いかに重要性を理解して自信を持ってお勧めできるか」という点も、サステナブルシーフードを広げる上で大切と述べました。
【イオン】イオンは、グループ1179店舗でCoC認証(MSC・ASC共通)を取得済み。サステナブルシーフードの裏付けのトップにMSC・ASC認証を据えており(2番目はGSSIと完全養殖、3番目はFIP)、水産エコラベルによる「安心の可視化」を推し進めています。

イオン執行役の三宅香さんは、消費者のMSCに対する疑問に答えるための一問一答式のスライドも披露。各問に明確な回答を述べました。さすがはMSC導入の先駆者です。

イオンリテールグループ商品戦略部の山本泰幸さんによると、イオンは「分かりやすく、コストの重複なく、世界に通用するエコラベルを採用することで、シングルスタンダードを目指す」と決めて、熟慮の上で、MSC・ASC認証を選択しています。
でも今回、山本さんは一抹の不安も吐露しました。「中国アリババグループの天猫生鮮など世界の巨大小売りがMSC調達に乗り出しています。イオンの売り場の6割近くは練り製品も含め輸入魚ですから、(MSC認証魚を)調達できなくなるという危機感がある。スピードをもって進めなければなりません」
さらにMSCに対して、「定置網漁など日本漁業をもっと理解して」「ASCのように人権や労働の視点も入れて」といったリクエストも。
先日、アジアの小売りとして初めてGSSIのパートナー企業になったイオン。「積極的に参加することによって持続可能な調達を早期実現して、次の世代に魚を残していきたい。非常に期待しています」という山本さんの言葉が心に残りました。
【生協】2866万人の組合員を抱える日本生活協同組合連合会を代表して登壇したのは、松本哲(さとし)さん。魚売り場の半分をMSC認証品が占めるスイスを視察して、魚種が豊富で冷凍より生鮮流通の多い日本で広めるには各ステークホルダーの協働が必要と感じたそうです。
その課題も認識した上で、松本さんは「MSC・ASCが最も信頼があり、商品や利用者の広がりが一番のラベルなので、その商品をきちんと我々も扱っていく」「認知率を上げるためにも、なるべくなら利用の多い(売れ筋の)商品を認証品にしたい」と語りました。
2007年からMSC認証品を扱っていた日生協は今、改めて「海のエコラベル」付き商品に力を入れています。認証品の商品数は50に迫る勢いで、さらに2018年度はMSC認証のホタテやホキも扱い始める予定だとか。
今年は、認証品の総額が一気に前年の約4倍に伸びています!

棒グラフは卸売価格の出荷額。2009~12年度が15億円で、その後は認証品の廃盤などで減少傾向だったものの、2016年にMSC認証を取得したタイセイヨウサバをノルウェーから調達したことも影響して、今年は急増し40億円規模に
認証品増加の主要因は、ノルウェーのサバ。日生協は産地のエピソードや商品が届くまでのストーリーを重視しており、組合員の多くは国産品志向です。このギャップを埋めるため、西友と同じく、MSC認証の予備審査などに挑戦する日本の漁業者の支援も検討しているそうです。

会場ロビーの生協ブース。MSC認証品が多数載っている宅配カタログには「海のエコラベル」付き商品を選ぶ意義の解説も
同業他社で普段はライバル関係にあろうと、会場に集まった人は皆、もっと大きな視点で「きちんとした魚を調達できる日本」を切望している。いろいろな企業の発表を聞いて、それを強く感じました。
ボリュームたっぷりのシンポジウムだったので、ブログも2部に……。この続きは次回お届けします!
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