こんにちは。漁業担当の鈴木です。
私は「漁業担当マネージャー」として、全国の漁業関係の皆様にMSC漁業認証について説明する機会が多いのですが、今回は、そのなかでよく聞かれる質問についてご紹介したいと思います。
刺し網、釣り、蛸壺のように、小型船に漁師さんが一人で乗って操業する漁法もあれば、500トンを超える大型船で何か月にもわたって航海する漁法もあります。
そこで、漁業関係者と話をしていると、「大中型まき網や沖合底引き網漁業のように、一度に多くの魚を漁獲する漁法は、MSC認証の対象にはならないのではないか?」「MSC認証の対象になるのは、釣りや定置網漁業のような小規模漁業だけなのではないか?」といった質問を受けます。
こうした質問に対しては、「どんな漁法でもMSC認証を目指すことができます」というお返事をしています。
MSCは、「この漁法は環境に悪い」「この漁法は資源にやさしい」というような漁法による差別はしません。
どのような漁法であっても、適切に資源管理を行い、きちんとルールに則って操業すれば、持続可能な漁業を実現することができると考えています。
ただし、「破壊的な漁法」については、MSC認証の対象外となります。
破壊的漁法とは、熱帯域で横行しているダイナマイト漁や毒を使った漁法です。
こうした漁法は、それ自体が環境へのダメージが大きく、根絶すべきものです。

小規模なまき刺網によるボラ漁業(西オーストラリア) ⓒMSC/Makoto Suzuki
漁業のルールを決めたりたり、魚のセリや入札をしたりするだけでなく、「朝市」やお祭りなど、漁協が音頭をとって活動することは多いと思います。
MSC認証も、もちろん、漁協が単位になって認証取得することができます。
しかし、漁協が唯一の単位というわけではありません。
2008年に日本で初めてMSC認証を取得した京都のアカガレイ漁業は、「京都府機船底引き網漁業連合会」という底引き網漁業の組織が認証取得の単位でした。
日本最大のMSC認証取得漁業である北海道のホタテガイ漁業は、「北海道漁連」が認証取得の単位です。そのなかには、オホーツク側のホタテガイ桁網漁業も、噴火湾での垂下式のホタテガイ生産も含まれています。
北海道はたくさんの漁協がありますが、各漁協ではなく、上部組織である漁連が主産地の漁協を取りまとめたのです。
2016年10月に認証を取得した、宮城県の遠洋カツオ・ビンナガ一本釣り漁業は、「株式会社 明豊」という水産加工会社が認証取得を目指しました。実際に漁業を行っているのは、(株)明豊と契約している3隻(2017年8月現在)の漁船です。

宮城・塩釜の明豊漁業 ⓒMSC/Nobuyuki Aoki
このように、漁業の組合、漁連、企業など、MSC認証取得の単位はばらばらです。
漁業者個人、いくつかの漁協、複数の都道府県にまたがる連合体など、さまざまな規模で認証取得を目指すことができます。
漁業認証取得を目指す場合、まずどのような単位であれば認証取得ができるかを考えてみることも大切です。
いわゆる魚類養殖、生け簀に魚を入れて、餌を与えて育てる養殖は、MSC認証の対象にはなりません。
それはなぜか?
MSCが設立された際に設立メンバーや関係者が話し合い、そのように決めたからです。
ですが、例外的に餌を与えてもいい場合もあります。
それは、卵から稚魚になるまで育てて、そのあとに川や海に放流する「孵化放流」です。
孵化放流は、いくつかの条件を満たすことで、「増殖漁業」としてMSC認証の対象となります。
また、一般に「養殖」と考えられているものでも、MSC認証の対象になっているものもあります。
それは、ホタテや牡蠣、ムール貝など、二枚貝の垂下式養殖です。
二枚貝の垂下式養殖は、餌は与えません。ホタテの殻などの基盤に貝の幼生が付着して自分で育つのを人間が少し手助けするだけ、というようにもとらえることができます。
そのため、二枚貝の垂下式養殖も「増殖漁業」としてMSC認証の対象になっています。

北海道・噴火湾での垂下式ホタテガイ漁業 (提供:北海道漁連)
ちなみに、養殖を対象にした認証制度には、「水産養殖管理協議会(ASC)」があります。
MSCとASCの違いは、一言でいうと、「天然と養殖の違い」です。
また、ASCは労働環境や地域社会と養殖場の関係など、社会的な側面を審査する基準を多く含んでいることが特長です。
MSCとASCは別の団体ですが、「サステナブル・シーフード・ウィーク」などで一緒にキャンペーンを行ったりしているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
魚類はもちろん、エビ・カニなどの甲殻類、イカ・タコ・貝などの軟体動物、ウニ・ナマコなどの棘皮動物などが審査の対象に含まれます。

世界初のMSC認証アワビ漁業(西オーストラリア) ©Jason Thomas/MSC
海の生き物だけではありません。川や湖の魚やエビなどもMSC認証の対象になります。
正確には、「哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類は除く」という定義があります。
したがって、以下の生き物はMSC認証の対象にはなりません。
また、哺乳類・爬虫類・両生類・鳥類を除いた海の生き物として、「海藻」があります。
海藻については、2017年8月現在、MSCはASCと協働で海藻の認証基準を策定しています。
2017年後半には、新しい海藻基準がリリースされる予定です。
ところで、上記の条件を満たせば、絶滅危惧種であっても認証の対象となるのでしょうか?
じつは、マンタやジンベエザメのようにワシントン条約に掲載され、将来の絶滅が危ぶまれている魚種であっても、MSC認証の審査の対象から外れることはありません(もちろん、審査の結果、認証が取得できるとは限りません)。
絶滅危惧種であっても、適切に保護・管理され、適切な方法で漁獲されることにより、将来確実に回復することを示すことができれば、持続可能な漁業として認めることができます。
もちろん、そのためにはたくさんの努力が必要です。
しかし、そのようにして世界のすべての漁業が持続可能な漁業に転換されていくことをMSCは目指しているのです。
いかがでしたでしょうか?
MSC漁業認証に対する理解が深まったらうれしいです。
これからも認証についてのQ&Aを掲載していきたいと思いますので、取り上げてほしいトピックがありましたら、MSC日本事務所までお寄せください!
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私は「漁業担当マネージャー」として、全国の漁業関係の皆様にMSC漁業認証について説明する機会が多いのですが、今回は、そのなかでよく聞かれる質問についてご紹介したいと思います。
【質問1】どんな漁法がMSC認証の対象になりますか?
日本には、たくさんの漁法があります。刺し網、釣り、蛸壺のように、小型船に漁師さんが一人で乗って操業する漁法もあれば、500トンを超える大型船で何か月にもわたって航海する漁法もあります。
そこで、漁業関係者と話をしていると、「大中型まき網や沖合底引き網漁業のように、一度に多くの魚を漁獲する漁法は、MSC認証の対象にはならないのではないか?」「MSC認証の対象になるのは、釣りや定置網漁業のような小規模漁業だけなのではないか?」といった質問を受けます。
こうした質問に対しては、「どんな漁法でもMSC認証を目指すことができます」というお返事をしています。
MSCは、「この漁法は環境に悪い」「この漁法は資源にやさしい」というような漁法による差別はしません。
どのような漁法であっても、適切に資源管理を行い、きちんとルールに則って操業すれば、持続可能な漁業を実現することができると考えています。
ただし、「破壊的な漁法」については、MSC認証の対象外となります。
破壊的漁法とは、熱帯域で横行しているダイナマイト漁や毒を使った漁法です。
こうした漁法は、それ自体が環境へのダメージが大きく、根絶すべきものです。
答え
ダイナマイト漁などの破壊的な漁法以外は、どんな漁法でもMSC認証の対象となります。
小規模なまき刺網によるボラ漁業(西オーストラリア) ⓒMSC/Makoto Suzuki
【質問2】日本でMSC認証を取る場合は「漁協」が単位になりますか?
日本の漁業が何か取り組みをする場合、「漁協」は一般的な単位です。漁業のルールを決めたりたり、魚のセリや入札をしたりするだけでなく、「朝市」やお祭りなど、漁協が音頭をとって活動することは多いと思います。
MSC認証も、もちろん、漁協が単位になって認証取得することができます。
しかし、漁協が唯一の単位というわけではありません。
2008年に日本で初めてMSC認証を取得した京都のアカガレイ漁業は、「京都府機船底引き網漁業連合会」という底引き網漁業の組織が認証取得の単位でした。
日本最大のMSC認証取得漁業である北海道のホタテガイ漁業は、「北海道漁連」が認証取得の単位です。そのなかには、オホーツク側のホタテガイ桁網漁業も、噴火湾での垂下式のホタテガイ生産も含まれています。
北海道はたくさんの漁協がありますが、各漁協ではなく、上部組織である漁連が主産地の漁協を取りまとめたのです。
2016年10月に認証を取得した、宮城県の遠洋カツオ・ビンナガ一本釣り漁業は、「株式会社 明豊」という水産加工会社が認証取得を目指しました。実際に漁業を行っているのは、(株)明豊と契約している3隻(2017年8月現在)の漁船です。

宮城・塩釜の明豊漁業 ⓒMSC/Nobuyuki Aoki
このように、漁業の組合、漁連、企業など、MSC認証取得の単位はばらばらです。
漁業者個人、いくつかの漁協、複数の都道府県にまたがる連合体など、さまざまな規模で認証取得を目指すことができます。
漁業認証取得を目指す場合、まずどのような単位であれば認証取得ができるかを考えてみることも大切です。
答え
漁協に限らず、いろいろな単位で認証を目指すことができます。【質問3】養殖はMSC認証の対象になりますか?
MSC認証のひとつの特徴は、天然の魚介類を漁獲する漁業を対象としていることです。いわゆる魚類養殖、生け簀に魚を入れて、餌を与えて育てる養殖は、MSC認証の対象にはなりません。
それはなぜか?
MSCが設立された際に設立メンバーや関係者が話し合い、そのように決めたからです。
ですが、例外的に餌を与えてもいい場合もあります。
それは、卵から稚魚になるまで育てて、そのあとに川や海に放流する「孵化放流」です。
孵化放流は、いくつかの条件を満たすことで、「増殖漁業」としてMSC認証の対象となります。
また、一般に「養殖」と考えられているものでも、MSC認証の対象になっているものもあります。
それは、ホタテや牡蠣、ムール貝など、二枚貝の垂下式養殖です。
二枚貝の垂下式養殖は、餌は与えません。ホタテの殻などの基盤に貝の幼生が付着して自分で育つのを人間が少し手助けするだけ、というようにもとらえることができます。
そのため、二枚貝の垂下式養殖も「増殖漁業」としてMSC認証の対象になっています。

北海道・噴火湾での垂下式ホタテガイ漁業 (提供:北海道漁連)
ちなみに、養殖を対象にした認証制度には、「水産養殖管理協議会(ASC)」があります。
MSCとASCの違いは、一言でいうと、「天然と養殖の違い」です。
また、ASCは労働環境や地域社会と養殖場の関係など、社会的な側面を審査する基準を多く含んでいることが特長です。
MSCとASCは別の団体ですが、「サステナブル・シーフード・ウィーク」などで一緒にキャンペーンを行ったりしているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
答え
MSC認証の対象は、一部の増殖漁業を含む天然の漁業です。【質問4】どんな魚がMSC認証の審査対象になりますか?
「魚介類」という言葉から思い浮かべる生き物は、ほとんどがMSC認証の審査の対象です。魚類はもちろん、エビ・カニなどの甲殻類、イカ・タコ・貝などの軟体動物、ウニ・ナマコなどの棘皮動物などが審査の対象に含まれます。

世界初のMSC認証アワビ漁業(西オーストラリア) ©Jason Thomas/MSC
海の生き物だけではありません。川や湖の魚やエビなどもMSC認証の対象になります。
正確には、「哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類は除く」という定義があります。
したがって、以下の生き物はMSC認証の対象にはなりません。
- 哺乳類 クジラ、イルカ
- 爬虫類 ウミガメ、スッポン、ウミヘビなど
- 両生類 サンショウウオなど
- 鳥類 (グリーンランドなどには海鳥を獲る「漁業」があるそうです!)
また、哺乳類・爬虫類・両生類・鳥類を除いた海の生き物として、「海藻」があります。
海藻については、2017年8月現在、MSCはASCと協働で海藻の認証基準を策定しています。
2017年後半には、新しい海藻基準がリリースされる予定です。
ところで、上記の条件を満たせば、絶滅危惧種であっても認証の対象となるのでしょうか?
じつは、マンタやジンベエザメのようにワシントン条約に掲載され、将来の絶滅が危ぶまれている魚種であっても、MSC認証の審査の対象から外れることはありません(もちろん、審査の結果、認証が取得できるとは限りません)。
絶滅危惧種であっても、適切に保護・管理され、適切な方法で漁獲されることにより、将来確実に回復することを示すことができれば、持続可能な漁業として認めることができます。
もちろん、そのためにはたくさんの努力が必要です。
しかし、そのようにして世界のすべての漁業が持続可能な漁業に転換されていくことをMSCは目指しているのです。
答え
魚介類全般(哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類以外)がMSC認証の対象となります。いかがでしたでしょうか?
MSC漁業認証に対する理解が深まったらうれしいです。
これからも認証についてのQ&Aを掲載していきたいと思いますので、取り上げてほしいトピックがありましたら、MSC日本事務所までお寄せください!
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