【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】

東京サステナブル・シーフード・シンポジウム(TSSS)」は、2日間にわたって開催されました(1日目のご報告はコチラ)。2日目は会場が3部屋に別れ、20ものセッションが行われました。

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興味深いテーマが息もつかせぬ勢いで同時進行し、国籍もさまざまな数百人の参加者が行き交う会場は、ちょっとした祭りのようなにぎわいでした。

その午前中のひとこまに、MSC日本事務所より、プログラム・ディレクターの石井幸造が登壇しました。ファシリテーターは一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会代表理事の山口真奈美さん、テーマは「エシカル消費」です。今回は、このセッションについて、レポートします。


大手3社とMSCによるセッション

「認証水産物を通じてのエシカル消費の推進とSDGsへの貢献」と題したこのセッションには、MSCのほかに、MSC認証水産物を扱う大手3社がそろいました。

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左から日本サステナブル・ラベル協会の山口さん、MSC日本事務所の石井、楽天の眞々部さん、日本マクドナルドの岩井さん、セブン&アイ・ホールディングスの尾崎さん


まずは、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、コーポレートコミュニケーション本部サステナビリティ推進部オフィサーの尾崎一夫さん。

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セブン&アイ・ホールディングスのグループは、2019年5月に環境宣言「GREEN CHALLENGE(グリーン チャレンジ)2050」を発表しました。その4つあるテーマの一つが、「持続可能な調達」です。

「取り組みを始めたばかり」ということで、現在扱うMSC認証品は明太子など少数ですが、セブンプレミアムなどオリジナル商品について、2030年までに50%、2050年までには100%、持続可能性が担保された食品原材料にするという高い目標を掲げています。

「SDGs達成の一歩として、そしてESG投資(投資者が企業の環境・社会・企業統治の取り組みを重視して投資先を選ぶこと)に応える観点でも必要を感じて認証品を導入しました」と尾崎さん。

同グループには、2020年に100周年を迎えるイトーヨーカドーをはじめ、コンビニエンスストアのセブンイレブン、食品スーパーと総合百貨店のそごう・西武などの流通小売のほか、レストランのデニーズなどが含まれます。その影響力は絶大です。

その使命について尾崎さんは次のように述べました。「グループ全店で1日に計2400万人、日本人の5人に一人が私どものグループに来店していただいているということは、我々も物を売るだけではだめなのです。売ると同時に正確な情報などをお客様に伝えていく使命があります」


続いて、日本マクドナルド株式会社 コーポレートリレーション本部CSR部マネージャーの岩井 正人さん。

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マクドナルドは日本だけで約2900店舗。アルバイトを含む従業員は15万人、年間の来客は14億人に達するというから、これまた多大な影響力を持つ企業です。

規模と影響力を自覚するマクドナルドは、世界で「Scale for Good」を掲げています。その柱の一つが「持続可能な食材の調達」。岩井さんは、調達の指標として、MSCやFSC®、レインフォレスト・アライアンスやパーム油のRSPO認証など国際認証制度を積極的に活用していることを紹介しました。

2019年8月には、国内の全店舗でMSCのCoC認証取得が完了し、MSC認証のスケトウダラを使った「フィレオフィッシュ」のパッケージに、2019年12月末までに順次、MSC「海のエコラベル」が付くことになりました! ※この件については、次回のブログで詳しくご紹介します。


続いて、楽天株式会社のサステナビリティ部シニアマネージャー兼楽天技術研究所未来店舗デザイン研究室の眞々部貴之さん。

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「楽天市場」は、ネット空間で2億5000万種類もの商品を販売する巨大モールです。前にブログでもご紹介した「EARTH MALL with Rakuten」は、国際認証付きの商品をワンクリックで一気に閲覧できる希少なサイト。2017年のスタート当初は約7000点だった商品数も、今は1万点以上になっています。

インターネットショッピングということもあり、水産認証(MSC認証とASC認証)の商品数は少ないのですが、眞々部さんは「小売に関わる者にとっては(持続可能な調達は)疑問を抱かないほど当たり前なことになりつつあります。認証機関がしっかりとしたプロセスの中で持続可能性を確認してくれて正しさが担保されている認証品は、非常に効率がいい」と語りました。


認証普及のカギは、親しみやすさ&若者

最後に、MSCの石井が登壇し「MSC認証制度は、持続可能な漁業を広げて水産物を将来世代まで残していくためのもの」と述べました。そのエンジンは、「MSCラベルの付いた商品を選ぶ」消費者の購買行動です。

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石井は次のように続けました。「欧米ではMSC認証が2006年頃から広がり、今はサステナビリティが一つの重要な価値として認められている。日本は約10年遅れですが、最近は水産会社も資源減少に非常に強い危機感を持ち、認証を積極的に扱っていこうという動きが出てきています」

しかし一方で、
「残念ながら(認証品への)お客さんの反応は薄い。商品選びのポイントが、価格から質や味や健康などにシフトしつつある。ここに持続可能性が入ればいいのですが」(尾崎さん)

「認証があるから買う、というのは特別な機会でないと難しいのでは。そういう時代が来るまで今は準備している感じです」(眞々部さん)

というのが、MSC認証水産物を扱う企業が感じている日本の現状。ファシリテーターの山口さんが指摘した通り、何かの事情で、複雑な流通経路のどこかでCoC認証の鎖が切れて、せっかくの認証原料がラベル無しで流通している場合も。

「数字的に把握できるのはラベルが付いたものだけですが、ラベルが付かずに流通しているボリュームはかなりあると思います。日本ではMSCラベル付き製品は天然魚の全流通量の1%に到達したところ。今後ラベルが増え、消費者が目にする機会も増えていくと思います」(石井)

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今は、普及の途上というわけです。そこで、日本での水産認証の広がりに向けて、それぞれが語りました。キーワードになったのは「親しみやすさ」と「若者・次世代」です。

それについて眞々部さんは次のように語りました。「意識は高く保ちつつ、どう敷居を下げるかが課題。調査したところ、サステナブルを知らない人でもエシカルな商品を買っていました。サステナブルな商品には必ずストーリーがあって、透明性と、しっかりとしたエビデンスも兼ね備えている。買った後に『それってサステナブルですよ』と伝えるのが大事。その一つの入り口、次の消費行動に影響していくのが認証ラベルなのではないでしょうか」

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サステナブル・シーフードを使ったおいしい料理も、普及にとても役立ちます! 写真は、ランチ・セッションで提供された「サステナブル・シーフードと季節野菜の六升弁当」。割り箸までFSC認証です。CoC認証を取得している和食店「きじま」作の繊細な和のおかずには、MSC認証のホタテやカツオ、ズワイガニ、メバチマグロが盛り込まれていて、驚くほど美味でした!


眞々部さんは、楽天の新卒採用の面接で、「EARTH MALL with Rakuten」が、若者の会社選びの一つのポイントになっていることを知ったそうです。

マクドナルドの岩井さんも、「今は認知度が低いが、マーケティング的にはブルーオーシャン戦略で、競合がいないところに飛び込んで行って、未来顧客を引き寄せる効果はある」と、次世代に注目しています。「(商品にラベルを付けることで)子どもたちの選択に認証が入り、未来顧客の獲得や未来雇用につながります。そういう方々に来てほしいのです。子や孫の代が、私たちが見ている自然環境を見られて、おいしい魚が食べられる世の中になっていくようにしたい」

セブン&アイ・ホールディングスの尾崎さんは、「当社では『Z世代(1990年代後半から2000年生まれの世代)に支持されないと我々は生き残れない』とよく言っています。認証品を増やし、CoC認証も取得していく方向です。お客様が認証品を見て選んでくれる時代になると、今かけているコストは、コストでなく投資に変わるのです」と語りました。


協力し合って「エシカル消費」を当たり前に

石井は最後に、一緒に登壇したスピーカーや会場に集まった関係者一同に呼び掛けました。

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「せっかくこうしてご一緒させていただく機会ができましたので、小売、外食、Eコマース、社員食堂とチャンネルは異なりますが、その壁を越えて、ぜひ皆さんと一緒に何かできればと思っています。また、エシカル消費として、MSC認証の他の、国際的に認知された認証と一緒に、全体として知っていただけるような活動もやりたいなと思っています。森に関心がある人が海の問題を知ることにもつながりますから」

まさに、その目的で結成された「日本サステナブル・ラベル協会」の代表理事を務めるファシリテーターの山口さんは、これに次のように応えました。
「自然はつながっています。実は私たちが本気で取り組まなくてはいけない重要なターニングポイントに、自然環境や気候変動は、来ているのではないかと思っています」
山口さんは、エシカル消費を国が後押ししていることも紹介しました。
 → 消費者庁の資料「あなたの消費が世界の未来を変える
 → 消費者庁のちらし「エシカル消費ってなぁに?

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私たちが店頭でMSC「海のエコラベル」付き製品を選べば、サステナブル・シーフードの市場が拡大し、持続可能な漁業に取り組む漁業者のインセンティブにつながります。また、漁業における違法操業や強制労働・児童労働の排除に貢献することにもなります。なにごとも小さな一歩からですね!

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というわけで、次回は身近な店舗にMSCラベルが増えます、という話題をお届けします。

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会場内のMSCブース。次回の私の記事は、この中央に写っている赤いロゴの企業のお話です!


文:瀬戸内千代(海洋ジャーナリスト)

               

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