【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】

~石原水産MSC認証取得! 記念連載その3(5回シリーズ)~

連載3回目は、いよいよ乗船して漁労長(船頭)のお話を聞きます。

焼津港に停泊中の第8永盛丸に向かうと、カンカンカン!カンカン!と船体のサビを取る槌音が響いてきました。

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第8永盛丸。3月末から伊豆で整備されて、4月中にピカピカになって帰ってくるそうです。春から、また1年間、繰り返し漁に出る日々が始まります

第8永盛丸の乗組員は28名。約半数がキリバスやインドネシアから来た船員さんで、コミュニケーションは基本的に日本語。もう20年以上も日本で働いている方も数名いらっしゃるそうです。

年に一度の船のドッグ入り(1カ月ほどの整備)を控え、皆さんが下準備の作業を進めている中、ご厚意に甘えて、船上にお邪魔しました。
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「メンテナンスするのは、安全のためもあるけど、やっぱり見た目きれいなほうがええやん。汚い船から魚を買いたくないやろう?」(友利さん)

取材にお付き合いくださったのは、この船を取り仕切る漁労長(船頭)の友利文男さんです。

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漁労長の友利さん。(後ろに写っているのは株式会社永盛丸の荒川社長)


混獲を防ぐプロの技

友利漁労長が指差す左舷には、散水用のノズルが並んでいました。

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一本釣りが始まると、ここから一斉に海水が放出されます。「餌をほおる」担当者は、大きな箱に入れた生き餌を、タモ網ですくって何度も海に投げ入れます。

海水シャワーで、小魚の群れが逃げ惑う時のように水面が泡立ち、さらに獲物をおびき寄せる生き餌がまかれることで、狙った魚群が興奮状態になって食事を始めます。

そこに投げ入れられるのが、前回も登場した、この釣り針です。
釣りばり

一本釣り漁では、釣った時の腕の感覚で、漁業者が瞬時に魚の種類やサイズまで判断して、要らない個体はリリースしているそうです。その時、この「かえし」のない独特の形状の釣り針が役立ちます。狙ったカツオ・ビンナガ以外は、傷付けずに海に返すのです。

感覚頼みの職人技なので、石原水産の吉永さん(前々回・前回にご登場)によると、MSC漁業認証の監査の時も「審査員に不思議がられた」とのこと。

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操業中の第8永盛丸(石原水産で見せていただいたVTRより)。釣り針に食いついた元気なカツオの重みで、釣り竿がしなっているのが見えます

個体単位で選んで獲れるのは、一本釣りならでは。力強いと同時に、繊細な感覚で上手に混獲も防ぐ一本釣り。なんともカッコイイ漁法です。


餌もフレッシュ

甲板にいくつも並ぶいけすは、航海のはじめには、小さなイワシたち(生き餌)で満たされています。

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左のほうに見える正方形のふたの下が「いけす」。航海のはじめに立ち寄った漁港でイワシを積み込み、漁が続く間、水質管理して餌をやって(餌に餌!)飼育し、この元気な生き餌で、元気なカツオ・ビンナガを釣ります

このいけすは、なんと冷凍庫にもなり、航海が進んで餌が減ってくると、釣果を収める倉庫に早変わりするそうです。限られた船上スペースを有効活用する工夫に感心しました。

いけす内の海水は、下から吸い上げた新鮮な海水と、熱交換器を通して温度を調節した海水を混ぜて泡(酸素)を含ませたもの。

生き餌は、ここから「おもて(舳先)」と「とも(船尾)」にある餌箱に移されて、「ひとかめ(いけす一つ)」ずつ大切に使われます。

「新鮮海水を温度を調整して適温に管理しているわけ。漁は平均40日ぐらいかかるから、その間、餌を傷めないようにね」



釣った魚の鮮度を守る

釣り上げられたカツオやビンナガは、「かえし」のない釣り針から簡単に外れて、漁業者たちの背後のオーニングシートと呼ばれるシートを滑り落ち、そのまま船内の冷凍庫へ。

「釣ったカツオは、マイナス20-25℃ぐらいで冷やします。鉄分や身の質がマグロと違うので、マイナス50-60℃にしたら割れてしまう。急速冷凍した後は、マイナス55℃で保管します。超低温の冷凍庫が海の上を走っとるようなもんです(笑)」

なんともゼイタクです。普段はスーパーマーケットの店頭で安さに心奪われがちな私も、ここまで手間とコストと、漁業の場合は命までかけて、自然界の恵みを大切に持ってきてくださった水産物に、安さを求めるなんて申し訳ない(これで安かったら何かがおかしい!)と思いました。

ちなみに、海水温や気温が上昇するほど、いけすの温度調節や冷凍庫の管理にコストがかかります。地球温暖化で高水温・高気温が続くことや、魚の減少に伴い遠い南洋での漁業が続くことは、そういう意味でも大変です。

「漁場は近いほど嬉しい。はよう釣って、はよう帰れるから」と友利さん。

日本から離れれば離れるほど、その分、燃費もかさみます。他国に近い漁場では、高額な入漁料が必要な場合もあります。日本近海の豊かさを回復させる必要性を改めて感じました。

次回は、海の未来と漁法に対する、漁労長の熱い思いをお届けします!



               

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