【フードライター浅野陽子の『海のエコラベル』現場より生中継!】

先日、MSCのグローバルアンバサダー・バートさんが来日し、日本人シェフとディナーイベントを行いました。(「シェフ4人のサステナブル晩餐会@原宿『eatrip』」
協力してくださったのは、サステナブルに理解がある日本人シェフたちですが、
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そのうちお二人はChefs for the Blue(シェフズ・フォー・ザ・ブルー)というシェフ集団に所属し、お店の営業時間外に、日本の海とシーフードを守る活動をされています。

いわばMSCと同じゴールを目指す「Chefs for the Blue(以下:CFB)」。
今回からシリーズでご紹介します。
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まずCFBの発起人であり、“世話人”としてグループの活動を取りまとめる佐々木ひろこさんにお話を伺いました。佐々木さんは、本業はシェフではなくフードライター兼翻訳家です。
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写真:eatripでのMSCとのイベント時、佐々木さんは司会を担当/写真右端


料理人取材15年ながら、知る機会のなかった「日本の海の危機」

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――佐々木さんはフードライターとして長らくご活動されていますね。

15年になります。最初はある有名なフードライターの、助手を勤めていました。

夫の留学で海外に行き、アメリカの大学では調理師の実技や講義、そしてジャーナリズム論も学びました。

帰国して活動を再開し、『専門料理』『dancyu』『料理通信』『料理王国』などの料理専門誌に執筆するほか、翻訳業もやっています。

浅野さんもフードライターさんですし、みなさん得意な取材分野をお持ちですが、私のテーマは「料理人」取材です。この15年いろいろなシェフたちに、厨房で話を聞いてきました。
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写真:フランス料理界の伝説の巨匠で、三ツ星シェフのピエール・ガニェール氏に取材(佐々木さんご提供)

――シェフへの取材経験が、どのようにCFBにつながっていったのでしょうか?

私はシェフが扱う食材として、農家や畜産業家にも取材しましたが、漁業だけずっとチャンスがありませんでした。

しかし一昨年、ある取材企画で日本の漁業とどっぷり向き合いました。そこであらためて、日本の海の危機的状況と、さらに加速している現実を知ったのです。

知り合いのシェフたちに話すと、彼らは「(素材としての)おいしい魚」には詳しいですが、私と同様、海の資源が枯渇している事実は知らなかった。

これってまずいよね、とさらに呼びかけて、シェフの輪を広げたのが始まりです。

シェフ30人の内輪の勉強会から、外部へと発信

―佐々木さんの呼びかけから、現在のようなグループになったのですか?
フレンチの石井真介シェフ(レストランシンシア/渋谷)と私で、海の現状に関心が高い料理人を集めて、勉強会を行いました。
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写真:シェフと佐々木さんの勉強会の様子(『メトロミニッツ』記事より)

何度か集まるうち「もっと僕たちから発信していかなければいけないのでは」となって。
グループ名を「Chefs for the Blue」と決め、石井シェフをリーダーに、2017年の春から活動を開始しました。

結成1年で海外の国際コンペで優勝!

――具体的にはどのような発信をされてきたのでしょうか?
CFBのフェイスブックページを立ち上げました。

そして日々取材を受けるシェフたちのネットワークから、勉強会の様子をウェブメディア『メトロミニッッツ』で紹介していただいたり(記事)、
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写真:「Chefs for the Blue」の専用FBページ

昨年9月には渋谷ヒカリエのトークセッション(詳細はこちら)を行いました。

11月には青山ファーマーズマーケットでもトークセッションをやって、ここでは同時にサステナブルな魚を使ったフードメニューも出して500食分売り、発信を少し形にできた実感がありました。

――そして今年は、海外のコンペティションに応募されたんですよね!
はい、今年1月に行われたアメリカのSeaWeb(海洋保全団体)主催の国際コンペティションにエントリーしました。私はエントリー用の書類作り(すべて英語)に追われて、大変だったのですが・・・

世界中から出場した40以上のチームから書類審査と投票の結果、私たちが1位となり、優勝することができたんです!(詳細はこちら
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写真: 2017年秋、青山ファーマーズマーケットのイベントで(佐々木さんご提供)

――すばらしいですね!その後の反響はありましたか?
メディアなど、お声がけいただく範囲が広がりましたね。

さらに優勝の副賞として、今年6月にバルセロナで行われる、SeaWeb主催のシーフードサミットに招待いただくことになりました。

CFBのワークショップの時間も作ってもらったので、リーダーの石井シェフほか2名のシェフと私で登壇し、日本の状況や私たちの思いを、世界各国の水産関係者に伝えてきます。

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写真:優勝し、米SeaWebのウェブサイトでCFBが紹介される

海外でシェフは、社会活動をするのが当たり前

―シェフと佐々木さんの団結からわずか一年で、めざましい成果ですね!
シェフは料理をするプロですが、一方で消費者側とサプライヤー側(食材の生産者など)の両方に、いろいろなことを伝えられる人たちです。

日本でもテレビで有名シェフやパティシエの発言が取り上げられることが多いですが、社会に強い影響力をおよぼす、稀有な存在なんですね。

海外では、トップシェフは本業のレストランのほかに、社会活動をするのが当たり前になっています

MSCグローバルアンバサダーのバートシェフもそうでしたが、資源保護やフェアトレードについて訴えたり、なんらかの活動をする人が多いです。
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写真:カメラマンを同行させながら、世界中のMSC認証漁業の現場を回るシェフのバート・ファン・オルフェン氏。MSC認証のシーフードで料理し、撮影した映像でサステナブル・シーフードの重要性を訴え続ける(©David Loftus)

しかし日本では、レストラン業界が情報不足で、また海外と比べて圧倒的な長時間労働や、社会的な慣習の違いもあり、ソーシャルに発信している料理人は、あまりいません。

なので、私たちCFBが、日本で新しい潮流を起こしたい。

CFBのシェフの発信力で、日本の海が変わり、社会が変わり・・・日本の料理人たちが、いかに真摯な思いを持って活動しているかを、多くの人に伝えられたら、本当に嬉しいです。

MSC認証を取ることが、商売につながる未来に

―MSC認証について、CFBや佐々木さんが感じられていることはなんですか?
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シェフとよく話しているのは、やっぱり日本発のMSC認証商品をもっと増やして欲しいです。日本の消費者にMSCや食の認証制度が、認知されないといけないですよね。

日本以外の先進国では、MSCは一般レベルまで浸透しています。食の「認証制度」への理解度が、圧倒的に高い。
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写真:ボストンで3月に開催されたSeafood Expo North Americaにて(佐々木さんご提供)

以前、アメリカで食のエキスポを取材した際、どの展示ブースでもMSCや、なんらかの認証ラベルが必ず付いていて驚きました。担当者に聞くと「認証ラベルがないと、商品を買ってもらえないんですよ」と。

海外では、認証を取ること=商売に直結しているんですね。IMG_0570
写真:同エキスポにて(佐々木さんご提供)

日本もそうなれば、MSC認証を取る漁業者さんが増え、シェフも国産のMSC食材を使うようになり、社会も変わると思います。MSCでも輸入品や冷凍ものしかないと、シェフは使いづらい。日本のMSC認証が増えることを、切に願っています。
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写真:同エキスポにて(佐々木さんご提供)

――そのアメリカのエキスポの話は、リアルな声ですね。
もっと身近な例もあります。私はイギリス人の友人が多く、プライベートの付き合いでよく会話します。

来日した際は、都内のスーパーに案内するのですが、みんな水産業界のプロや研究者でもない、ごく普通のイギリス人の家庭の主婦であるのに「この商品はMSC認証がないの?」「TAC(※)は?」と必ず質問をしてくるのです。
※TAC(タック):水産資源の保護・管理のため、魚種ごとに年間漁獲可能量を定める制度(水産庁サイトより)
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写真:イギリスの大手スーパーチェーン・TESCO(テスコ)の生鮮売り場。MSCのラベルが当たり前のように見られる(©MSC)

実はCFBを結成する前に、こうしてイギリス人の友人たちに質問されたことが、MSCを知るきっかけになったので・・・日本でもレストランのお客さんや、スーパーに買い物に来る人などに広まれば、理想的ですよね。

――本当にそうですね!

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写真:「Chefs for the Blue」の専用FBページ

――なお、CFBでは現在も活動に参加してくださるシェフや料理人を募集中だそうで、ご興味がある方は上記のFacebookページからメッセージをお送りください。

佐々木さん、今日は貴重なお話をありがとうございました。次はCFBのシェフたちへのインタビューをお送りします!