【フードライター浅野陽子の『海のエコラベル』現場より生中継!】

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前回の続きです。前編を読んでいない方はここからどうぞ!

さらに続くサステナブルなメイン料理

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コースの料理はまたどんどん続き・・・4品め、「ビンナガの赤ワイン煮 プランタニエール」。これは室田シェフが担当されました。

フレンチの「シヴェ」というクラシックな調理法で、豚の血やビンナガの内臓を入れてコクととろみを出した、赤ワインのソースでいただくビンナガのメインです。「煮込み料理ですがビンナガはやわらかくしすぎず、歯ごたえを残したので噛んでうまみを味わってください」と室田シェフ。
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これ、本当に濃厚でおいしかった。一緒に合わせたシラーがぴったり。まさに「赤ワインと楽しむ魚料理」でした。
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デザートです。「パッションフルーツとイチゴのパブロヴァ」。これは野村シェフが担当。野村シェフは普段から良質な食材にこだわって生産者と対話されているそうで、これは千葉の房総半島産のパッションフルーツを使ったとのこと。酸味と甘みのバランスがちょうどよかったです。

どよめきが上がった「カツオのクッキー」

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最後のお茶菓子で出た「カツオのクッキー」。室田シェフのお店のパティシエの方が、乾燥・燻製したカツオの粉末で作ったそうで「魚の可能性を探りました」というシェフの説明には参加者からどよめきが起きました。
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カツオ節のような香ばしさが甘いお菓子に意外にすごくマッチ!おいしかったです!

シェフたちが語るサステナブル化への夢

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お茶の時間に入ってから、シェフ4人のトークセッションが始まりました。テーマは「料理人として考える、水産物のサステナビリティ」について。

MCは、フードライターであり、また「Chefs for the Blue」の世話人でもある佐々木ひろこさん(右端)。CFBは、日本人シェフたちが団結したグループで、ご自身のお店を持ちつつ、サステナブルシーフードの啓蒙活動を行っています。室田シェフと森枝シェフもCFBのメンバーです。
(※CFBは応募中だったアメリカのサステナブル・シーフードの大会で優勝!詳細はここでも後日紹介します)

日本が変われば、世界も変わる

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最初のトークはバートさん。
「2008年にMSCと出会い、世界を回って発信する活動を続けています。それ以前はパリの老舗の三ツ星レストラン『ルカ・カルトン』で働き、シーフードを使って料理を作る素晴らしさと、逆にどんどん地球から魚が減っている現状を知り、ジレンマを感じていました」
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「ヨーロッパでは、日本やアジア各国ほど魚を食べる習慣がないにも関わらず、シーフードを守ることに多くの人が協力しています。私が住むオランダではここ10年で急速に浸透し、大手の小売チェーンやレストランではどこもMSC認証製品が並んでいます。

日本の食文化は世界から注目されています。アムステルダムでも毎週2店ずつ日本料理の新店がオープンしているほど人気で、長らく魚を愛し、食べてきた日本人の意識が変われば、世界も変えられると信じています。メディアのみなさん、消費者の方、一緒にチャレンジしましょう!」

「多様性の時代」にあった魚の使い方を

次に森枝シェフ。森枝シェフと室田シェフは塩釜港に飛び、カツオとビンナガの産地を見学されてきたとのこと。
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「料理人になって約10年ですが、築地に仕入れに行くたびに『魚がない』『今日は少ないから高い』と言われ続け、逆に魚がある状況や安い時代を知りません。明らかに獲りすぎを実感する一方で、塩釜の現場も見て、漁業者さんも『生きるための商売』として多くの魚が必要だと感じたところです」
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「スズキなど、決まった魚種に人気が集中することも枯渇の原因だと思います。僕は自分の店(下北沢の『サーモン&トラウト』)では、あまり使われないブラックバスなど湖の魚も料理しています。多様性の時代のいま、料理人が新しい価値を見つけられれば、海の資源を守ることができるのではないかと考えています

おいしさに加え、社会や未来に意味をもたらす料理を

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そして室田シェフ。ご自身で森に入り、狩猟した鴨などを使ったジビエ料理をお店では提供されています。

「僕の店(渋谷の『ラチュレ』)ではジビエをお出していますが、それは増えすぎて駆除される野生動物の肉を、できるだけ大切に利用してあげたいという思いからです。料理人としておいしいだけでなく、社会的に意味があり、未来への持続性もある料理を作らなければと、日々考えています」
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「ジビエ以外にできることはないかと探したとき、魚の話を聞き、これはやらなければならないと痛感しました。日本でも料理人が、もっとMSC認証の魚を使えば、MSCの魚種も増えて、世の中も変わると思います。特にオリンピックまでには日本全体が少しでも変わって、世界からの見る目も変えたいですね」

食の業界歴20年、訴え続ければ夢が現実になる

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最後は今回の会場として「eatrip」を提供くださったオーナーシェフの野村友里さん。料理人ですが、2009年に同名の映画「eatrip」を撮影された映画監督でもあります。

 「撮影のため築地市場を取材した際『この30〜40年で魚がびっくりするほど減った』といろんな人から聞きました。また公開後、欧米5カ国から招待を受けたのですが、訪問するたびに『うちの国から日本にマグロを送っている事実をご存知ですか?』と言われ、自分も魚をよく食べる日本人なのに、現状を知らなかったことにショックを受けました」
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「室田シェフも言われていましたが、すぐに意識を変えるのは難しくても、訴え続ければ世の中の流れは変わります。20年前、職場の上司とオーガニック食材を使おうとして非常に苦労したのですが、いまは毎週末、青山通りでファーマーズマーケットが開かれ、飲食業者でなくても誰でも入手できるようになりました。

当時を思うと夢のようですが、実はこのマーケットをとりまとめている主催者が、そのときの上司なんです。20年間食の業界にいて、夢が現実に変わるケースを見ているので、魚に関しても行動し続けたいと思っています
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どのシェフのコメントも素晴らしく、食の現場に立つ人ならではのリアルで具体的な内容でした。長い道のりかもしれませんが、サステナブルの概念が必ず、私たち日本人が魚を食べるベースになる!シェフたちのお話を聞いて確信しました。
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シェフのみなさま、塩釜からいらしてくださった松永社長、佐々木さん、参加してくださったメディアのみなさま、本当にありがとうございました!そしてMSCスタッフのみなさま、お疲れさまでした!