MSC漁業担当の高宮城です。
すっかり秋になり、涼しくなってきましたね。サンマもおいしい時期になりましたが、今のところ水揚げが芳しくないとのこと、漁模様が好転することを願っています。

さて今回は、先日中国の北京で行われ、キャパシティービルディング・ワークショップに出席した時の様子をお伝えします。
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先日、同じ漁業チームの鈴木のブログ記事で、「持続可能性に向かう中国の水産業とMSC中国(その1その2)」をレポートしました。今後の中国での資源管理がより強化され、MSC認証水産物の市場の広がりとともに、認証漁業が増えていくことを期待します。

一方、これは中国だけに限るものではありませんが、MSC漁業認証規準の要求事項を満たすことが、現時点では難しい漁業が多いことも事実です。しかし、このような漁業でも、必要に応じて資源管理の取組みを改善することで、MSC認証を取得することができます。

このようなMSC認証の規準をフレームワークとして活用し、持続可能な漁業を目指す取り組みが、漁業改善プロジェクト(FIP : Fisheries Improvement Program)と呼ばれています。
FIPのプロセスとしては、まずMSCの予備審査を行うことで、MSC認証の規準に対する漁業の現状を把握します。
それから漁業改善に必要な項目の把握、改善達成までのタイムラインの作成(5年以内を目標)、漁業改善を実施します。漁業改善中には、定期的に実施状況を確認し、マーケットや関係者に対して進捗の報告を行います。
先日の鈴木の投稿でも、ザリガニ漁業や黄海のアサリ漁業など、中国のいくつかのFIPが紹介されていました。

さて、今回中国で行われたキャパシティービルディング・ワークショップは、将来的に中国でMSC認証を目指す漁業が出てきた時のサポート体制を構築するために、研究者、行政、NGOなどの関係者の知識強化を目的としていました。
ちなみに、私自身の参加目的も、MSCの規準に対する理解を深めることでした。昨年、鈴木も同様にロンドンで開催されたワークショップに参加しています。
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ワークショップでは、実際にMSC認証審査経験のある講師により、規準をもとにどのような視点から漁業を採点するのか、そしてどのような改善を行えば要求事項を満たすことが出来るのかが詳細に解説されました。

講師は、MSC発展途上国チームのハナ・ノビュリーと、独立コンサルタントのトリスタン・サウスウォール氏がつとめました。
トリスタン氏は産業コンサルとしても数々の漁業の現場を見てきた非常に経験豊かな方で、2007年以降多くのMSC認証審査を行った経歴を持ちます。MSCの規準は2007年以降2度の改定が行われていますが、トリスタン氏は現場を知る審査員として基準の改定に関して深く携わっており、規準改定をめぐる協議や背景についてよくご存知でした。
また、氏の祖国イギリスにおいても、Project Inshoreというイギリス国内の450を超える多彩な沿岸漁業に対して一斉にMSCの予備審査を行ったプロジェクトに、中心人物として関わっていました。このプロジェクトは、将来にわたるイギリス沿岸漁業存続の為の適切な漁業管理を目標とした、強化項目の把握を行うためのものということです。

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一方、中国からの参加者の方々も、それぞれの専門性に加え非常に多彩かつ豊富な経験をもっていました。環境政策提言を行う国際NGO、国立の水産研究所、実際にFIPを行っているNGO、認証機関などから約20名の方々が、5日間のハードなスケジュールにも関わらず参加しました。
参加者には、中国国内外の資源管理をめぐる動きや他の認証制度等にも精通された方々が多くいましたが、MSCの漁業認証規準の詳細な内容については、皆今回が初めての機会だということでした。

ワークショップでは、講師のハナとトリスタン氏が、MSC漁業認証の28の審査項目を一つずつ解説し、それぞれの得点60・80・100点の水準でどのような管理が求められるのかを、実例とともに示しました。また、漁業改善が必要な場合には具体的にどのようなプランで行うべきか、改善における問題点と解決法なども解説していくというものでした。
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一般に公開されている規準を、多様な認証漁業の具体例と照らし合わせて解説できるトリスタン氏は、さすが豊富な経験をもつ審査員だと、非常に感銘を受けました。
恥ずかしながら、私自身もMSCで働く者でありながら、規準の中に正確に解釈が出来ていなかった、詳細に気を払えていなかった項目が多々見つかりました。
また規準と現実の漁業の間に立たされ、報告書という形で最終決定を行わなければならない、審査員という仕事の厳しさも垣間見えるものでした。

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28の審査項目に関して一つずつ学んだと聞いただけでは、ワークショップの内容の濃さがあまり伝わらないかもしれませんが、今回のワークショップで使用された資料「キャパシティ・ビルディング・ツールキット」は、ご覧のように非常に分厚い文書であり、かなりの情報量を含むもので、本当にハードなワークショップだったと思います。

ちなみにこの文書は英語版のみとなりますが、規準の解釈を手助けするために非常に良い資料(これ自体は規準文書ではありません)です。オンラインでPDFとしてダウンロードが可能なので、関心のある方はぜひ一度ご覧いただければと思います。

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ワークショップでは頻繁にグループワークの機会があり、各審査項目に対して、漁業の事例をどのように評価するかを主に議論しました。 08
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また、どのように漁業改善プランを立てるかという共通のテーマに対して、各グループのプランを発表する機会もあり、さまざまな立場の関係者をまとめ上げて漁業改善を行うことの難しさも感じることができました。
このようなグループワークを通して徐々にお互いの距離も近くなり、中国漁業に関する貴重なお話もたくさん聞くことができました。

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最後には、今回のワークショップを完了したことに対する表彰式もありました。
5日間のハードなスケジュールをこなした参加者の皆さんは、MSCの規準に関する詳細な知識、MSCで審査を想定した場合の漁業の現状、またどのような改善を行うべきかを十分に把握されていることだと思います。
このワークショップを受講し、さらにMSCのオンライントレーニングを受けると、テクニカル・コンサルタントとしてMSCから正式に認められることになります。

今後、参加者の皆さんは、MSC漁業認証規準に対する深い知識とともに、中国でのMSC認証漁業の広がりに貢献していくことでしょう。

同様に、日本国内でもMSCの漁業認証を広めていくうえで、このようなワークショップ開催の必要があるのではと感じました。

現在予備審査に関心を示している漁業は国内でも増え続けており、行政機関や研究機関のサポートを頂く機会が増えています。
認証審査において、漁業に関するすべての情報がきちんと審査員に提供され、また正確に解釈されることで、持続可能な資源管理を行う国内の漁業が、MSC認証とともに世界にアピールされることを望みます。

MSC日本事務所もこのようなワークショップ開催を目標に、今後積極的に関係者様にお声がけしていく予定です。関心のある方は、ぜひ日本事務所までご一報お願いします。

               

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