【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】

こんにちは。海洋ジャーナリストの瀬戸内千代です。
今回は、漁業の土台となる海洋環境がテーマです。

MSCはより確実に水産資源を守るために、2014年に「MSC漁業規準」を改訂しました。
2017年10月1日からは、認証更新のための再審査にも改訂版が適用されます。
この新規準で、特に強化されたのが「生態系や生息域への配慮」

そこで、ハワイ大学でサンゴ礁の生態を学んだ経歴を持つ、MSC日本事務所の漁業担当オフィサーの高宮城大樹(たかみやぎ・ひろき)さんに、詳しいお話を伺いました。
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サステナブルな漁業にとって重要な生態系保全

魚は化石燃料などと違って、正しく管理すればサステナブルに利用できる資源。それを根底から支えているのが、多種多様な魚が生まれ育つ、豊かな海洋生態系です。

海洋生態系は、さまざまな生物と、陸も含めた物質循環の絶妙なバランスの上に成り立っています。特定の種を獲り過ぎたり、森・川・海の本来のつながりを壊したりしてしまうと、一気に崩れかねません。

そのため、近年は生息域や生態系への配慮も含めた資源管理も重要視されています。

「生息域や生態系についての評価は、複雑かつ困難ではあります。ですが、1種だけを管理しても、生息域や生態系全体を守らなければバランスが保てません。やはりそれらへの配慮も水産資源を守るためには大切なんです」

というわけでMSCでは、持続可能な漁業のために掲げた3原則の中に「生態系」への配慮を挙げています。
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そして2014年に改定された新規準では、原則2の「生態系」や「生息域」に関する項目が強化されました。
改訂内容の抜粋を見ると、認証漁業には、
  • 脆弱(ぜいじゃく)な海洋生態系への特別な配慮
  • 生息域への回復不能なダメージを回避すること
が求められています。

生息域とは、生き物がすむ場所のこと。海の中は生息域だらけということになりますが、MSCの認証審査で特に焦点が当てられたのは、海底環境です。
泥や砂に潜る習性のある魚も多く、海底にはエビ・カニ・貝類など、水産資源であり、魚の餌としても重要な、さまざまな底生生物(ベントス)がすんでいます。確かにとても重要な生息域ですね。

審査でチェックする3つの項目

では実際の審査では、生息域や生態系について何がチェックされるのでしょうか?

「対象となる漁業が影響を与える生息域や生態系について、3つの項目の質や収集方法に焦点を当てて審査されます。
  • 現状(漁業が操業した結果としての、生息域や生態系の状態)
  • 管理(漁業と生態系に対する管理)
  • データ(現状を把握するための情報収集)
生態系や生息域について『現状』を分析し、『管理』を改善して、その管理の結果を得るために『情報』収集を行う、それにより出てきた結果を『現状』として分析する……このように3つを回していくことで、漁業と生態系の管理の質を上げていきます」

なるほど。こんな感じかしら(描いてみました)。
3つのサイクル
MSCが求めるのは、これを、ただ平面的にぐるぐる回すのではなく、らせんを描きながら上昇させること。ポジティブな循環で、認証取得後も漁業のサステナビリティが向上していくイメージです。

ちなみに、生息域や生態系に配慮した漁業管理というのは、例えばどんな方法があるのでしょうか?
「傷付けてはいけないサンゴの群落と接触しないように操業海域や漁具を工夫したり、海底に生息する希少種を混獲しないように対策するなど、さまざまですね」
なるほど。こうした管理が生息域や生態系にもたらした結果を得るために、情報を収集して……というサイクルがあるわけですね。

日本のサンゴ礁は生物の宝庫

サンゴの話が出ましたが、高宮城さんは学生時代、サンゴを研究されたそうですね?

「地元の高専の生物資源工学部で、弱ったサンゴの上に大発生するオウギケイソウの培養が僕の研究のテーマでした。非常に培養が難しい藻なので、ことごとく失敗しましたねぇ(笑)」

話し方に独特な優しい抑揚がある高宮城さんは、沖縄出身。海のそばで育ち、ダイビング好きのお父様と海に潜り、小さいころからサンゴ礁に親しんでいたそうです。
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5年間、沖縄でバイオテクノロジーを学んだ後、ご家族の助言などもあって単身ハワイへ!海洋生物学で知られた、ハワイ大学に進学しました。

「意気投合したクラスメートが、大学管轄下のワイキキ水族館の飼育員で。僕もインターンになり、卒業研究もサンゴの成長をテーマに水族館で行いました。1年半ほど毎日のように通って、水槽に潜って掃除したり、サンゴを増やしたり、非常に良い経験をさせてもらいました」
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※高宮城さんご提供の、当時の写真

ハワイや米国本土での就職も考えましたが、結局は沖縄に帰った高宮城さん。

「沖縄は独特なサンゴ礁生態系に恵まれた場所です。生物多様性が断然豊かで、基本的に種数が多い。ハワイと比べても全く違う。住んでいた時は気づかなかったけれど、これは宝だな、大事にしないとな、と思いました」

そして、地元の観光資源でもあり、漁業資源でもあるサンゴ礁を守るための仕事を探し始めました。……って、あれ? どういう経緯で、東京にあるMSCオフィスに至ったのでしょうか。

「MSCの求人を偶然見たんです。その時はMSCを知らなくて、さっと通り過ぎました。ですが就職活動を続けるうちに、サンゴや海の保全に対して最も説得力がある発言をできるのは、漁業者ではないかと考え始めました。一番の利害関係者ですし、毎日海に行って変化を感じているはずですから。それで漁業という仕事に興味がわいて、いろいろと調べ始めると、今後資源管理が絶対に重要になると感じて……そのとき、またMSCの求人を見直したんですね」

この二度見のおかげで、晴れて2016年の春にMSCに就職!

「消費行動に注目して漁獲を管理するアプローチが当時の僕には新鮮で、新しい風だなと思いました」と、MSCの第一印象をまだ鮮明に覚えているフレッシュな高宮城さんは、日本事務所イチの若手です。

次回も高宮城さんが、生息域と生態系の認証規準について、さらに詳しく教えてくださいます。乞うご期待!

               

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