【海洋ジャーナリスト瀬戸内千代の「もっと知りたい!MSC」】

こんにちは。海洋ジャーナリストの瀬戸内千代です。
来月(6月)ニューヨークで、グローバルな海洋問題をテーマに「国連海洋会議」が開催されるそうですね。「海」に特化して国連レベルで議論する画期的な場として、期待されているようです。笹川平和財団海洋政策研究所の寺島紘士所長のブログ参照

今回は、それに先立ち、4月に国連大学(東京・青山)で開催された国際シンポジウムの内容をご紹介します。

求められる日本企業のリーダーシップ

シンポジウムのテーマは、「持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み – 海洋のサステイナビリティを中心に」。

写真は、開会挨拶をされたスウェーデンのヴィクトリア皇太子です。
SDGのアボケイト(提唱者)でいらっしゃいます。
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幼い頃から海が身近だったという皇太子は、世界最大の動物性タンパク源でもある魚類が、需要増による乱獲で減っている現状を憂い、

・消費者には知る権利がある
・生産者に正しい選択を求めることは消費者の義務であると同時に、唯一の選択肢でもある


ということを、まっすぐなまなざしで述べられました。

SDGs(エス・ディー・ジーズ)は、持続可能な未来に向けて17の開発目標を掲げたもので、SDG14(目標14)は、海がテーマ。
「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」という、まさにMSCの目指すところと重なる内容です。
※以下、日本政府による概要ファイル

6月の国連海洋会議をフィジーと共催するスウェーデンは、持続可能な漁業の推進に熱心に取り組んでいます。

ここで、シンポジウム後半で登場したスライドの1枚を、ご紹介します。
上のほうに見える赤い丸2つ。これ、日の丸です。
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ストックホルム・レジリエンスセンターが、多国籍水産大手160社の売上を比較したところ、上位30社が、全漁獲量の15%を扱っていたそうです。

そして、トップがマルハニチロ、2位が日本水産(ニッスイ)だったというのが、この図です。いずれも、すでにMSC認証商品を扱っている企業です。極洋の名も11位に見えます。

ヴィクトリア皇太子と同センターの科学者たちは、影響力の大きい水産会社を「キーストーンアクター」と呼び、2016年末に、日本企業2社を含む数社をスウェーデンの非公式なキーストーン・ダイアローグ(会合)に招き、「海洋管理の担い手になってくれませんか」と相談しました。
ニュースリリース
※キーストーン・ダイアローグに関するMSCのニュースリリースはこちら

こうして発足したのが、今後、長期的に活動していくグローバルイニシアチブ「海洋管理のための水産事業」です。マルハニチロとニッスイなど8社が初回に参加して、持続可能な水産業を誓う書面にサインしました(その後、極洋も署名しています)。

SDGsの17ある目標の中でも、SDG14は、日本にとってかなり重要な目標と言えそうです!

「惑星の限界」という考え方

基調講演を行ったストックホルム・レジリエンスセンターのヨハン・ロックストローム所長は、「プラネタリー・バウンダリー(惑星の限界)」の提唱者として知られています。
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「気候の安定が農業を生み、人口が指数関数的に増えました。その結果、ここ1万年ほど続いていた安定が、この50年で急速に失われたのです」

図やグラフを指し示しながら、スケールの大きな話が続きます。
そして、ついにプラネタリー・バウンダリーの図が登場!
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中央に見える青い地球を囲む赤線が、この惑星の限界を示し、ぐるりと並ぶ各項目の現状レベルは、バーの長さと信号の色(緑→安全、黄→注意、赤→危険)で表現されています。

限界ラインから、ぐんと大きく張り出している項目は、
Biosphere integrity(生物圏の完全性)とBiogeochemical flows(生化学フロー)。
どちらもBio-(バイオ)が付くから、生物絡みです。

細かく見ると、Biosphere integrityのgenetic diversity(遺伝的な多様性)が真っ赤。絶滅スピードが速くて、生物の多様性がピンチだということ。
そして、Biogeochemical flowsのnitrogen(窒素)が赤で、phosphorus(リン)はオレンジ。農業や下水処理など人間活動によって、窒素・リン循環が狂ってしまったということ。
※詳細は、ストックホルム・レジリエンスセンターのホームページへ(英語のみ)
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ⓒHadelProductions

海洋生態系の健全性に関わる項目が、大きく限界をはみ出しているのは、水産業にとって非常に由々しき問題です。
しかも、最近の二酸化炭素や太陽熱の急増で、それらを黙々と吸収してきた「レジリエンス(復元力)が大変高い」海洋全体が、バランスを崩しつつあるそうです。

「2015-16年に加速したサンゴの大量白化」も、その表れ、とのこと。海の中の熱帯雨林と呼ばれるほど生物多様性が豊かなサンゴ礁の減少は、水産業にも影響するでしょう。

ロックストローム氏は、「通常、エビデンス(科学的根拠)が示されてからアクション(行動)に移るまで、25年ほどかかる」と述べ、「現世代が、決定的な役割を果たす」と、今を生きる私たちの責任を強調しました。確かに、次世代に託すのでは、もう手遅れかもしれません。
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MSCが果たす役割とは

先日のブログで速報した通り、このシンポジウムには、MSC日本事務所プログラム・ディレクターの石井さんも登壇されました。

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」というテーマのパネルディスカッションで、海洋酸性化から、マイクロプラスチック、IUU(違法、無報告、無規制)漁業まで、海の問題が幅広く話し合われました。

石井さんは、海のエコラベルの概要を述べた後、最近のトピックスとして、太平洋島しょ国のMSC取得例を挙げました。欧州でのMSC認証付き缶詰商品の需要増を背景に、南太平洋の島しょ国のカツオやビンナガの漁業者の認証取得が増えているという明るい話題です。
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最後に石井さんは、「SDGを通して海の問題を知ってもらいたい。持続可能な水産物のマーケット拡大に貢献していきたい」と、抱負を述べました。

本シンポジウムに出席して

ロックストローム氏の「向こう10年でマインドシフトが進む」といった今後の方向性を示した言葉が、ストックホルム・レジリエンスセンター所長から日本企業へのエールのようにも聞こえました。

というわけで、今回はそれらを共有して、終わります。

・パリ協定やSDGsを契機に、持続可能性をビジネスに組み込む企業が増えている
・この動きを金融業界にさらに広げれば、大きなパラダイムシフトが起きる
・持続可能な方法を選ぶことが、より安価で、当然の選択になるほうが良いだろう
・無関心層が、持続可能な方法を、たやすく、ごく自然に選択できるような仕組みづくりを

以上、SDG14の国際シンポジウム参加報告でした。では、また次回!

               

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