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                                                       © Matt Watson MSC
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9月はじめに、西オーストラリアを訪問してきました。
州都パース市を拠点に、当地で進行中のMSCプロジェクトの様子を視察しました。

オーストラリアは7つの州を持つ連邦制ですが、西オーストラリア州は最大の州です。
面積は約253万平方㎞で、オーストラリア全体の約3分の1を占めています。
ちなみに、日本の面積の約6.6倍。
一方で人口は少なく、その広い大地に、たった250万人しか住んでいません。
大阪市とほぼ同じ人口です。
したがって、まったく利用されてない土地というものがはるかに多く、
車で走っていると、いつまでたっても、原野、草原、砂漠などが続きます。
ときどきカンガルーなどが昼寝しているのを見ることができます。
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人口は大阪市とほぼ同じ。でも面積は10,000倍。
そんな西オーストラリア州で、現在、州政府と漁業者が一丸となったMSCプロジェクトが
進んでいます。

2012年、州政府は、州内の漁業によるMSC認証取得のため、1450万豪ドルの予算を
組みました。
これは、現在のレートで、12億3000万円にあたります。
予算の期限は4年間。
内訳は、650万豪ドルの審査費用と、審査をサポートするための
毎年200万豪ドルの研究費です。

MSC漁業認証取得のプロセスには、予備審査と本審査があり、認証取得後も、
4回の年次監査、更新審査などがあります。
(詳しくは「MSC漁業認証のプロセス」をご覧ください)
西オーストラリア州政府は、そのうち、予備審査、本審査、初回の年次監査の費用を
負担することに決めました。
(認証を取得するまでと、認証を取得してから1年間は州政府が面倒を見るけど、
2年目以降は自分で費用を捻出してね、という制度になっています。)

西オーストラリア州には、10,194kmの長い海岸線があります。
その長い海岸線上で、約50の漁業が行われています。
大規模漁業から小規模漁業まで含めて、全部で50ということです。

2013年以降、これら50の漁業すべてに対して予備審査を行いました。
この予備審査によって、それぞれの漁業の認証取得の可能性を探ります。

結果として、現在、
  • エクスマウス湾のエビ・トロール漁業
  • オーストラリア西海岸深海かに漁業
  • シャーク湾のエビ・トロール漁業
  • 白蝶貝養殖漁業
  • ピールハーベイ河口のワタリガニ漁業とボラ漁業
という5つの漁業が認証取得の可能性が高いとして、本審査に入りました。
 
それでは、ここで、西オーストラリア州の漁業を簡単に紹介しましょう。

【西オーストラリア・ロックロブスター(イセエビ)漁業】(2000年認証取得)
今回のMSCプロジェクトの対象ではありませんが、西オーストラリアを代表する
MSC漁業です。
2000年に世界で最初にMSC認証を取得したこの漁業は、2005年、2010年に続き
今年、3回目の更新審査を通過しました。
15年のあいだに、漁業管理の手法も改善が行われました。とくに、2009年に
漁獲高の個別割当制度を導入したことが、漁業に大きな変化をもたらしました。
漁業者は相場が高い時に操業し、相場が安い時には休むようになりました。
それによって、収入が上がり、家族と過ごす時間も増えたということです。
滞在中に、運よく水揚げを見ることが出来ました。
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【エクスマウス湾のエビ・トロール漁業】(2014年8月に本審査入り)
州政府による一斉予備審査のあと、2014年8月に、エクスマウス湾とシャーク湾という
2箇所のエビ・トロール漁業が本審査に入りました。
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                    © Matt Watson MSC
【西オーストラリア白蝶貝漁業】(2015年9月本審査入り)
ブルーム市を中心に行われている南洋真珠の漁業が今月本審査に入りました。
エシカル(倫理的)なジュエリーが浸透しているなかで、サステナブルな真珠も
もうじき誕生するかもしれません。
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                  © Matt Watson MSC
【ピールハーベイ河口のワタリガニ漁業とボラ漁業】(2015年8月本審査入り】
ワタリガニを獲るプロの漁業者と、レジャーでワタリガニ釣りを楽しむ市民とが、
合同でMSC認証取得を目指すことになりました。
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                 © Matt Watson MSC 
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                 © Matt Watson MSC
50の漁業のうち、すでに47漁業が予備審査を終了させましたが、3つの漁業の予備審査は
現在進行中です。
今後、必要に応じて、漁業省が主導で漁業の改善プログラムを組んでいきます。
州漁業省はプロジェクトの期間を延長する予定で、本審査入りする漁業は今後も増えそうです。

西オーストラリア州政府がMSC認証を推進するわけ

ところで、なぜ州政府は、12億円もの税金を投じて、漁業者のMSC認証取得を
サポートするようになったのでしょうか?

今回、5日間の滞在中に、漁業者、水産業界団体、研究者、行政関係者など、
さまざまな人に話を聞くことができました。

まず、エクスマウス湾でエビ漁業を操業しているMGカイリス社のジョージ・カイリス氏に話を
聞きました。
「我社がMSC認証取得を目指す理由は、第一に漁業規制のリスクを抑えるためです」
とカイリス氏は言います。
環境意識の高いオーストラリアでは、持続可能な操業をしていないと見なされれば、市民や
環境団体から苦情を受けることになり、場合によっては操業停止命令を下されることになります。
MSC認証取得によって持続可能性を客観的に示すことにより、そうしたリスクを避ける
というのが、MGカイリス社にとっては一番のメリットだと言います。
もちろん、MSC認証取得による販路拡大・価格向上も考えていますが、それは同社にとっては
最優先課題ではないのです。
 
実際、漁業が操業停止になるということはオーストラリアではよくあるようです。
MGカイリス社はホタテ貝漁業も行っていますが、資源の減少により1年以上操業停止に
なっていました。しかしながら、資源が減少したら、漁業を休止して
資源の回復を待つというのはオーストラリアの漁業関係者にとっては常識となっており、
その制度自体に文句を言う人はいないようです。資源が回復したら、
また獲りにいけばいいのです。
(ちなみに、休漁中は、乗組員は他の船に乗ったり、他の仕事をしたりしているようです)

港に停泊中のMGカイリス社のホタテ漁船(休漁中)
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漁業者団体や、州漁業省のスタッフにも話を聞くことができました。

漁業者団体であるWAFICで、長年にわたりMSCを推進してきたガイ・レイランド氏に
よると、州政府からの資金援助が決まるまでには、漁業者団体からの強い地道な
働きかけがあったということです。

環境保全をのぞむ声が強い西オーストラリアでは、漁業を守るためには、
持続可能性を示すことが不可欠だとレイランド氏も言います。
そのためには、中立的で客観的な第三者認証が必要でした。
そこで、世界のいくつもの認証制度を比較検討した結果、MSC認証がもっとも
信頼できる認証制度であることを確信したと言います。

レイモンド氏をはじめ、漁業団体からの強い要請を受けて、州漁業省は2012年に
MSCのための予算を組むことを決定しました。
その予算は、単に審査費用だけではなく、審査に必要な情報収集の費用も含まれて
いました。

現在、漁業省では、MSC認証関係のプロジェクトのために10名あまりのスタッフを配置し、
漁業がMSC認証を取得するのをサポートしています。
とくに、MSC認証を取得するのに必要な情報(資源状態、漁獲データ、混獲種のデータ、
生態系への影響、漁業管理体制など)は、おおむね政府のスタッフが収集し、
認証機関に提供するという体制ができています。

写真は、エクスマウス湾のエビ漁業についての、270ページに及ぶ州政府による
報告書です。
認証機関は、この報告書を参考にしながら、その漁業が確かに持続可能であるという
判断を下すことができます。
まさに、州政府による、いたれりつくせりの報告書なのです。
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それにしても、西オーストラリア州政府はなぜそこまでやるのでしょう。

たしかに、環境が守られなければ、魚もいなくなります。
魚を獲りすぎれば、やはり魚がいなくなります。
魚がいなくなれば、漁業者は仕事を失い、私たちは食べるものと食文化を失います。

そうならないために、海の環境や、水産資源を守りながら操業することが重要なことを、
西オーストラリアの漁業関係者はしっかりと理解しています。
そんな漁業者を、州政府は守ろうとしています。
そして、世界的に認められた認証制度を使って、自分たちの善い取り組みを世間に
示そうとしています。それは、彼らにとっては至極自然なことのように思われました。

「それにしても、ものすごい徹底ぶり…」

私が日本との違いに驚嘆していると、レイランド氏が言いました。
「あんまり圧倒されるんじゃないよ。ここだって、最初からそうだったわけじゃない。少しずつ、
小さなチャンスを掴みながらやってきたんだ。」

小さなチャンスを掴みながら、少しずつ。

その言葉を噛みしめながら、持続可能な水産業を目指して、これからも地道に
頑張っていこうと思いました。
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次回は、引き続き、西オーストラリア州の話題をお送りします。
ピールハーベイ河口のボラ漁業、乗船記です。お楽しみに!

               

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