前回のブログ、京都のアカガレイ漁業(1)では、
漁業担当の鈴木が底曳網漁船に乗せてもらい、漁業の様子をレポートしました。

今回は、この漁業が認証取得に至った経緯を紹介します。

京都のアカガレイ漁業が認証を取得したのは2008年。

今回お話を伺ってみて、認証に至るまでには、20年以上の資源管理の歴史があることがわかりました。

    

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                               写真:青木信之氏

3月12日に舞鶴市にある京都府漁協を訪れました。

アカガレイ漁業のMSC認証取得に向けて尽力されてきた、
京都府漁協の濱中貴志さんと、京都府の海洋センターの山﨑淳先生にお話を伺いました。

まず、漁業の概要についてお話を聞きます。

京都府の底曳網漁業の漁場は、兵庫県と福井県の間の、幅約55㎞の縦長の海域となっています。

沿岸の浅い海域は底曳網の操業は禁止となっており、実際には、水深約100m~350mの間で行われています。
主な漁獲物は、アカガレイ、ズワイガニ、ハタハタ、ニギス、その他のカレイ類(ソウハチなど)です。


京都 底曳網ー3
              京都府農林水産技術センター海洋センターのホームページより

漁期は、春漁期(3月21日から5月31日まで)、秋漁期(9月1日から11月5日まで)、冬漁期(11月6日から3月20日まで)という3つのシーズンに分けられ、それぞれの時期で異なった魚が漁獲されています。

京都 底引き網ー1
                京都府農林水産技術センター海洋センターのホームページより

現在、京都ではこれらの魚種を資源管理するため、さまざまな取り組みが行われています。
なかでも、最初のきっかけは、日本海の冬の味覚である、ズワイガニの保護だったそうです。

下のグラフは、日本海西部海域(左側)と京都府(右側)のズワイガニの漁獲量の推移です。
1960年代半ばには、日本海西部全体で12,000トンあった水揚げは、1970年代半ばには3,000トン台に落ち込みました。
京都府でも、同じ時期に、約400トンから100トン以下にまで減少しました。

ズワイガニ水揚げ量
              京都府農林水産技術センター海洋センターのホームページより

また、ズワイガニの減少よりも少しあとになりますが、1980年頃を境に、アカガレイの漁獲量も急激に減りました。

日本海におけるアカガレイの沖合底引き網の漁獲量(トン)
                             「平成26年度魚種別系群別資源評価」より


この状況をなんとか改善しなければならないと立ち上がったのが、京都府立海洋センター(当時)の故・篠田正俊先生でした。
篠田先生は、「カニ博士」と呼ばれたズワイガニの専門家です。

篠田先生は、ズワイガニおよびアカガレイの繁殖域を保護する必要があると訴えました。

海洋センターのリーダーシップのもと、1983年、京都府はズワイガニが多く生息する一部の海域を恒久的な保護区とすることに決めました。

具体的には、その保護区とされた海域には、約250mの間隔でびっしりとコンクリートブロックが沈められました。

底曳網漁業は、網を海底に降ろし、ゆっくりとした速度で網を曳き、海底や海底近くにいる魚をとる漁法です。
コンクリートブロックがあると、網は破れてしまうため、操業できません。

このようにして、底曳網が絶対に操業できない区域を造り出したのです。

京都 保護区
                京都府農林水産技術センター海洋センターのホームページより

全国で初めての取り組みで、効果が出るかどうかも分かりませんでした。
ブロックを沈めるにあたっては、当然、漁業者の反対は大きかったといいます。

関係者で議論を重ねましたが、漁業者も何か新しい管理をはじめないと資源が枯渇するとの危機感があり、それが決断につながりました。
ついに、漁業者たちは、清水の舞台から飛び降りるような思いで、保護区を造ることを決定したのです。

保護区ができたあとに、海洋センターが保護区内で調査を行ったところ、ズワイガニが増えていることが分かりました。
また、保護区で育ったカニが区外へ移動し、保護区の周辺でズワイガニの好漁場が形成されるようになりました。
資源が上向き、反対していた漁業者も「確かに増えている」ということを実感できるようになりました。

同じように、保護区による効果は、ズワイガニとほぼ同じ場所に生息するアカガレイにもあらわれました。

このようにして、ズワイガニとアカガレイの資源に対する
保護区の効果が認められ、新たな保護区が造られるようになりました。
そして、2008年までに、合計6か所の保護区ができました。
これは、総面積67.8km² 東京ディズニーランド133個分にあたります。

資源保護の取り組みはさらに続きました。

ズワイガニの漁期は、冬漁期の約5か月間で、それ以外の時期には、水揚げが禁止されています。
ズワイガニ禁漁期には、たとえばズワイガニが混獲されたら、リリースしなければなりません。

しかしながら、リリースされたズワイガニは、かなりの確率で死んでしまうことが分かったのです。

そこで、京都の漁業者たちは、さらに厳しい自主規制をかけることにしました。
ズワイガニが生息する海域は水深200m~400mですが、秋漁期と春漁期にはその大部分を占める水深約220m~350mの範囲を禁漁区にしました。

現在では、春漁期と秋漁期の操業は、禁漁区の外側の浅い海域(ピンク色)で行われています。

京都 底引き網ー5
                              MSC認証再認証報告書より(一部加筆)

また、春漁期、秋漁期におけるアカガレイ漁は水深200m前後から220m付近で行われますが、ここでもズワイガニの混獲が多少みられていました。
そこで、アカガレイは漁獲し、ズワイガニは逃がすことができる改良型の網を海洋センターが開発し、連合会に所属する全船がこの網を導入しました。

これにより、小さなサイズのアカガレイを逃がし、ズワイガニの混獲を減らし、ヒトデなど商品にならない魚介類の無駄な混獲を減らすことができます。

京都 改良網-2
これらの取り組みにより、京都府機船底曳網漁業連合会は、MSCの本審査において、
MSCの定める3つの原則を満たした持続可能な漁業であることを示しました。
そして、2008年に、アジアで初めて、MSC認証を取得したのです。

京都のアカガレイによるMSC認証取得には、長い資源管理の歴史があったのです。

 

かしこく獲り、かしこく食べればいつまでも利用し続けることができる水産資源ですが、
自然の生産能力を超える漁獲は、水産資源を崩壊させてしまうことにもつながります。

私たちMSCは、このような、水産資源に配慮した漁業を応援しています。

京都のアカガレイ漁業の取り組みが、日本中に知られるといいなと願っています。

    

ところで、このアカガレイ、最近新しい食べ方が提案されるようになりました。
それは、「幻の味」アカガレイのお刺身です。
詳細は、京都アカガレイ漁業(3)へ!
アカガレイお刺身

また先月、イオン桂川店では、京都女子大と提携して、アカガレイフェアが行われました。
こちらも詳細は京都アカガレイ漁業(3)へ!

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前回の漁船の体験記を読んでない方は、ぜひ「京都のアカガレイ漁業(1)」をお読みください。

    

今回のブログを書くにあたっては、京都府農林水産技術センター海洋センターのホームページを参考にしました。
京都の底曳網漁業についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらをお読みください。
http://www.pref.kyoto.jp/kaiyo2/zuwai/index.html


               

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